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国立劇場あぜくら会

イベントレポート

あぜくらの集い
「国立劇場 あぜくら会会員特別 バックステージツアー」を開催いたしました

7月26日(日)、国立劇場大劇場にて、一昨年からご好評をいただいている「あぜくら会会員特別バックステージツアー」を今年も開催いたしました。

役者のように花道を通って舞台へ。
役者のように花道を通って舞台へ。

まずご参加の皆さんには三班に分かれてご見学いただきました。花道を通って舞台上へ移動していただいた際には、「役者になった気分ね」という声もあがります。

客席は横幅が広く、奥行きは19メートルと横に長い造りです。これは残響時間を短くする(音を響かせすぎない)ため。また舞台セットの転換は大きな「盆」に乗せた道具を廻して行うため、客席よりも広い舞台が必要です。また舞台はすべて檜で出来ていることなど、舞台監督の説明に皆さん熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

花道の出入りに使われる「鳥屋(とや)」には「揚幕(あげまく)」が掛かっていますが、揚幕の開け閉めを担当するのは大道具の専任スタッフです。演出と大きく関わるため、役者の好みや音楽にも精通し、繊細なタイミングが必要とされます。揚幕に開いている穴から外を見て開け閉めするという説明に驚かれる方も多かったようです。

初登場の「雪篭(ゆきかご)」

舞台上でのハイライトは、「大迫(ぜ)り」の昇降体験です。皆さんに大迫りの中央に乗っていただき、まずは上昇。「うわぁ、高い」「ポーズを決めたままでは大変でしょうね」「屋根の上での立ち回りなんて怖そう」と、想像以上の高さに緊張気味の方もいらっしゃいました。そこから下降し、深い奈落へ。大道具の作業場もある奈落下まで降りたあとは舞台面まで戻ります。

大迫りの上がる様子。
大迫りの上がる様子。

去年のバックステージツアーでは浅葱幕(あさぎまく)の「振り落とし」をご説明するために小さめの布を使って実演しましたが、今年は本格的な幕を使用して皆さんに体験していただきました。まずはバトンに掛けられた浅葱幕が降ろされ、全員で幕を巻いていきます。巻き終えた幕はズシリとした重さです。その浅葱幕が掛かるバトンを再び上昇させ、バトンを時計方向にクルリと回すと、幕が落とされる仕掛けになっています。「一瞬の場面転換ですね」と、皆さん感心しきりのご様子でした。

浅葱幕を巻く体験をして頂きました。
浅葱幕を巻く体験をして頂きました。

そして今回のバックステージで初めて登場したのが「雪篭」です。長方形の「振り篭」に入った薄い「紙の雪」に触っていただくと、あちこちから歓声があがります。古くは手作業で切った三角形の雪(きれいに舞うからという説も)を使うこともあったようですが、現在は機械で切られた四角い紙の雪を使用しています。ただし「あまり軽すぎても舞い上がってしまうので適度の大きさと重さが必要です」と舞台監督から解説がありました。実際に篭を振ってヒラヒラ、サラサラと雪が舞い落ちてくる様子に、「雪音がドンドンドン…と鳴って、今にも『新口村』が始まりそうですね」と感慨を洩らす方もいらっしゃいました。

雪篭から雪の降る様子を間近に。
雪篭から雪の降る様子を間近に。

様々なスタッフが働く楽屋

舞台面から移動して、楽屋まわりもご見学いただきます。楽屋入口で出演者たちを迎えるお稲荷さんや、履き物の出し入れを行う口番(くちばん)さんなどを説明した後、入口すぐの場所にある「頭取(とうどり)部屋」もご紹介しました。役者の楽屋入り状況がひと目でわかる「着到板(ちゃくとうばん)」は公演が終わるとすべてカンナで削り、次の月のために新しくするという説明に、皆さん大変驚かれていました。スケジュール全般の管理・進行を担当する頭取と共に、この部屋を使用する狂言作者は、柝(き)を打つほか、着到板の名前を書く仕事も担っています。小道具の手紙の文言を書くことも狂言作者の役割で、そうした様々なスタッフの仕事内容についても皆さん興味を持たれていたようです。

楽屋での自由時間には、俳優たちが使用する楽屋、衣裳部屋、床山部屋、小道具部屋のほか、大小三つある風呂場なども見学していただきました。

三班それぞれのコースで見学が終わると、客席に再びお集まりいただき、最後は質問タイムです。歌舞伎の舞台を支えるスタッフの人数や、照明のこだわり、かつらの誂え方、音響についてなど、様々な質問が寄せられ、中には「舞台監督さんは開演中どこにいるのですか?」というユニークな質問も。舞台監督専用の指令卓は下手袖にあるものの、建具の開閉や道具の配置チェック、盆廻しのキュー出しなど四六時中動き回っているため、「国立劇場小劇場でも一日に二、三万歩は歩きます」と舞台監督が答えていました。

こうして盛りだくさんな内容となったバックステージも大盛況のうちに終了しました。

あぜくら会では、伝統芸能を身近に感じていただけるよう、今後もさまざまなイベントを企画してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。

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