[新作文楽]シェイクスピア=作 「不破留寿之大夫(ふあるすのたいふ)」

ブログ&コラム

2014年9月24日

ご来場ありがとうございました

  9月文楽公演第3部の新作文楽『不破留寿之太夫』は、おかげさまで9月22日(月)に無事閉幕いたしました。たくさんのお客様にご来場いただきまして、誠にありがとうございました。

いつかまた不破留寿之太夫と会える日が来るかもしれません。あるいは、まったく新しい出会いがあるかもしれません。劇場に足を運んでくださったお客様、また、この特設サイトに立ち寄ってくださった方々、皆さまに心からの感謝をこめて──。


 「不破留寿之太夫は人間らしさの骨頂にございます」

                                           杏里の国を後にする不破留寿              

 

 

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ご来場ありがとうございました

2014年9月19日

ナゾの男

   舞台をご覧になった方はおわかりのように、『不破留寿之太夫』には、物語の登場人物だけではない、ちょっとナゾの人物も出てきます。

『不破留寿之太夫』の世界へと導く水先案内人のようでもあり、ふと気づけば居酒屋の奥でしきりにペンを動かしていたり、そうかと思うと周りの客と一緒に酒盛りしていたりもします。そしてひとり杏里の国を後にする不破留寿之太夫の背中を見送っているのも……。

「彼」は何者なのでしょうか。

 正解はありません。どうぞご自由に想像してみてください。


                  

不破留寿之太夫の背中を見送るナゾの男
 

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ナゾの男

2014年9月18日

作調:藤舎呂英インタビュー~『不破留寿之太夫』の「音」はこうして作られる!

 監修者の鶴澤清治を筆頭に、三味線、琴、大弓(おおきゅう)が奏でる音色も迫力の『不破留寿之太夫』。それだけではなく、普段文楽ではなかなか耳にしないあんな音やこんな音、気になりませんか?お囃子パートの〈作調〉として、いわゆる「音響効果」全般を手がけたのが、洋楽とのコラボレーション経験も豊富な、囃子方の藤舎呂英(とうしゃ・ろえい)。清治の溢れ出るイメージを具体化させるために、チャレンジの連続だったという音づくりの舞台裏を教えてもらいました。すでに舞台を観た方も、もう一度音を確かめたくなりますよ!

藤舎呂英氏

音が鳴るものはすべて楽器

 「今までにない文楽を」という清治の強い思いを託され、純邦楽の楽器のみならず洋楽器も駆使している『不破留寿之太夫』。〈作調〉としてどんなことを心がけたのでしょうか。
呂英「洋楽器を使っても、いかに邦楽の良さを出すかが第一でした。邦楽のリズムや間を生かして、洋楽器は混ぜる程度に。拍子をわざとずらすと洋楽器でも邦楽の匂いがします。僕たちにとっては、音が鳴るものは全部楽器なんですよ。清治さんも次から次へといろんなイメージが湧いてこられるようで、試行錯誤しました」
 清治による特別注文がどんなものだったか例を挙げてもらうと……

清治mission1:「テニスのボールを打つ音がほしい」
 居酒屋で、不破留寿がホラ吹きっぷりを春若に追求されるシーンがあります。「さぁ」「さぁ」「さぁ」「さぁ」……と詰め寄られていくやり取りは、清治の脳内にテニスのラリーが浮かんだ模様。そこでまず考えたのは「マグカップをスリッパの裏で叩く」。しかし音が出にくく断念。代わりに竹筒で試すも、百発百中で音を出すのはやはり難しい。最終的にたどり着いたのは……「お風呂の湯をすくう【手桶】の角で竹筒を叩く」でした。
呂英百円均一ショップで片っ端から買って試したり、道路で石を叩いて道ゆく人にヘンな顔で見られたり……。手桶でやってみたらポーン!と音が出ることを発見して。舞台裏で毎日囃子方が叩いてます」

清治mission2:「凍りつくような音がほしい」
 クライマックス、領主になった春若からの思いもよらない言葉に不破留寿が凍りつく、あの場面です。ここは劇場のドアを留める鉄の重しを金づちでカーンと叩いているとか。
呂英「これはわりとすぐ思いつきました。清治さんは“インパクトのある強い音を”とのご希望だったので、ある程度重さがないとあの音は出ないんです。5キロくらいはあると思いますが、下に置くと響かないので、持ち上げて叩いてもらっています」

清治mission3:「イギリスの居酒屋みたいな音がほしい」
 お、後半の居酒屋場面ですね。わいわいガヤガヤと飲み食いしているパブの賑やかさを音で表現したい!ということでしょう。杏里の国の居酒屋は英国風なんですね……。
呂英を入れて華やかにし、フォークやナイフの音がするんじゃないかと思ってトライアングルをエッセンスで混ぜています。何でもこじつけていかないと出来ないので(笑)」

 少し挙げただけでも清治ミッションのハードさがおわかりいただけたでしょうか。「音」の工夫は全編にわたります。不破留寿が女房たちに恋文を書く場面では、サラサラと書くイメージをシェーカーの「シャカシャカ」という音で表現。賑々しいサンバのリズムは、ラテン音楽でよく使われる打楽器アゴゴでストレートに。「葬送行進曲」から「結婚行進曲」へと転換する場面ではタンバリンを入れてアクセントをつけました。一方、小判をまく音は、伝統的な邦楽器で松虫という小型の鉦を使っています。ハイテク全盛のご時世ですが、毎日ナマで演奏するのが伝統芸能の底力。アナログだからこそ、創意工夫も生まれるわけです。

呂英「ストーリーも感動的ですし、何より清治さんの音楽が素晴らしくて圧倒されます。だからこそ作調は全ての楽器を邦楽なりの解釈で使うことにこだわりました。また新作ですから、言葉の邪魔をしないことが大切です。お囃子は「足したくなるところで引く」程度が一番だと思っています。今回は「宇宙のイメージで」などとおっしゃる清治さんについていくのが大変でしたけど(笑)、音探しはゲームのようで楽しかったですね。洋楽器が意外と合うことがわかって、ティンパニーを使っても面白いだろうとか、囃子方の人数を増やせたらもう少し音が華やかになるかもしれない……等々、もっともっと可能性はあると思っています。

 

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制作者・出演者が語る『不破留寿之太夫』
『不破留寿之太夫』の「音」はこうして作られる!

2014年9月17日

豊竹英大夫が語る『不破留寿之太夫』

 アッと言う間に折り返し地点を過ぎた『不破留寿之太夫』。おかげ様でご好評をいただき、連日賑わいをみせています。そんな客席の熱気を直に感じているのが、不破留寿之太夫役を語っている豊竹英大夫です。監修者・鶴澤清治の思いの丈を一身に受け、三味線を弾く清治の隣で大奮闘中。何しろ開幕前には「英大夫君にかかっている」「普段の彼に近いキャラクターだからそのままやってもらえれば」と清治の熱い期待(という名のプレッシャー?)を背負っていただけに、幕が開いてからの反応に感慨もひとしおのようです。

お客さんの笑い声に手応えを感じます

『不破留寿之太夫』を語る英大夫 英大夫が使う床本

──お客様の反応はいかがですか。

英大夫 めちゃめちゃいいですね!リピートしてくださるお客さんも多いんですよ。東京の方だけでなく、大阪のお客さんも。今までも新作の舞台はいろいろありましたけど、この手応えは初めてですね。最後には立ち上がって拍手してくださる方もいますし。

──新作ならではのご苦労があったと思いますが。

英大夫 文章が現代語ですからね。字余りや字足らずがあるんですが、それはしょうがないことですから。語りにくさはありますけど、逆に普段とはまったく違う面白みがあります。お客さんの笑い声で、しっかり伝わっていることがわかるというのは嬉しいですね。
 

──不破留寿之太夫の魅力とは?

英大夫 人間が持っている全ての性格が詰まっているところじゃないですか。清濁併せのむというかね。春若とは対照的ですけど、春若は不破留寿に対して羨ましさもあると思うんです。「あんな風に生きられたら面白いな」という願望を抱かせる人間ですよね。ヤンチャばっかりしてるけども、思想的にはしっかりしていて、決してバカじゃない。単なる好色で酒飲みの人間じゃないところが、非常に魅力的ですね。無茶苦茶してるようでいて、ギリギリのルールは守っていると思います。最終的には「戦は愚かしいものだ」というメッセージがちゃんとあることが嬉しいですね。最後の独白は僕自身も不破留寿に自分を重ねられる気がして、非常に語りがいがあります。
 

──古典はメッセージを表面に出さずに作品全体がメッセージになっている場合が多いんですが、今回のようにズバリ自分の考えを表現することは少ないですね。

英大夫 僕は非常にストレートで嬉しいですね。シェイクスピアのメッセージを文章として表現できるってことは。
 

──英語で韻を踏むところを日本語に置き換えている部分などはいかがですか。

英大夫 あれはね、大きな顔して大きな声出してやると、お客さんもノってきてくれるんです。はじめは河合先生の台本を読んで、ちょっと心配だったんですよ。「これ、クスッともしてもらえなかったらどうしよう……マズイんちゃうの?」って(笑)。でも幕が開いてみたら反応が良くて、自信がつきましたね。
 

──新作文楽『不破留寿之太夫』について、英大夫さんのご感想を聞かせていただけますか?

英大夫 文楽のスタイルがいかにしっかりしているかということが、見てもらえば伝わると思うんです。それと今回はシェイクスピアという屋台骨があったことが大きい。シェイクスピアを知らない人でも、根底に流れている精神は本能的にわかるんじゃないかな。新作としてこれから残っていくものになるといいですね。

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制作者・出演者が語る『不破留寿之太夫』

2014年9月9日

『不破留寿之太夫』ついに開幕!

9月6日(土)午後7時からの第3部『不破留寿之太夫』が、ついに幕を開けました!

開演前から、大夫と三味線が座る「床」の背景がいつもとは違うことにお気付きのお客様もいらっしゃった様子。そうです、主人公・不破留寿之太夫の「破格さ」(by鶴澤清治)に見合うべく、舞台美術や演出、音響効果、照明、そしてもちろん人形の細部にいたるまで、あらゆる工夫が凝らされています。大夫と三味線の肩衣もグリーンの地に流れるような模様が。この肩衣も草原の続きになっているのです。




 


客席を包む笑い

セットの全貌が明らかになると、客席から「ほ〜う……」と感嘆の声がもれます。大きな桜の樹の下では、不破留寿之太夫と春若の主従とは思えない軽口のたたき合い。シェイクスピアの言葉遊びを意識した韻の踏み方もリズミカルで楽しく、春若が不破留寿のおっさんに対して「大酒呑みの脂身野郎」などと一刀両断すると客席もドッと沸きます(みんな納得ってことですな)。「すーいふうと膨らみをる」なんて詞の通り、酔っぱらって眠りこけ、波を打ったる太鼓腹、ぽってりぷにぷに感がたまらず、つい手を伸ばして触ってみたくなるほど。あ、もちろんこのブログで度々取り上げてきた「へそピアス」も輝いてますよ。不破留寿を語る豊竹英大夫がまた風貌も不破留寿にぴったりで(失礼?)、大口をたたくわりに小心者でいい加減、でもどこか憎めない愛嬌をみごとに表現しています。

 



監修の鶴澤清治による音楽は、イギリス民謡やクラシックあり、ラップやサンバ風ありと、三味線、琴、大弓(おおきゅう)が奏でる「和」の音色と「洋」の要素が意外性もありながら心地よく調和し、時にテンポよく賑やかに、時に雄大かつ叙情的に、『不破留寿之太夫』の世界を音で表現していました。

セットの美しさは度々当ブログでも紹介している通り。終演後には「面白かったね〜」「セットが綺麗だった」「人形がかわいかった!」など、「文楽×シェイクスピア」を肩肘はらずに楽しまれた様子のお客様の声が聞かれました。

『不破留寿之太夫』は9月22日(月)まで絶賛上演中です。一度と言わず二度三度と、ぜひ劇場にお運びを。観る度に新たな発見がありますよ!

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『不破留寿之太夫』ついに開幕!

2014年9月5日

開幕目前!『不破留寿之太夫』絶賛リハーサル中!

 開幕に向けて、着々と舞台稽古が進む『不破留寿之太夫』。これまで美術を手がける石井みつるのデザイン画や人形製作の様子を紹介してきましたが、ついについに、すべてがリアルな三次元のものとして目の前に現れる日が迫ってきました。リハーサルを重ねる現代劇とは違って、文楽の舞台稽古は初日直前のほんの数日。もちろん、その前に念入りな打ち合わせを重ねていますが。
 大勢のスタッフが舞台装置の転換や仕掛け、照明や音響のタイミング、人の出入りの方向(上手か下手か)などを確認し、場合によってはその場で道具の手直しもしていきます。初日2日前の舞台稽古の様子を、ここでちらりと特別公開しましょう。セットに関してはネタバレ注意!「感動が薄れるから実際に観劇するまで見たくない!」という方ここから先はご覧になりませんように……。写真を見て「おお〜っっ」と思った方も、ぜひぜひ、劇場でこの立体感、臨場感をお確かめください!



大きな桜の樹の下で

 国立劇場小劇場の舞台上にてただならぬ存在感を放っているのが、チラシ・ポスターにもなっている大きな桜の樹です。青空から茜色へ、星が瞬く夜空へと刻一刻と変化していくうち、流れ星が一筋。
 そして桜の樹の全貌が明らかに。舞台いっぱいに広がるダイナミックな美しさは圧巻の一言!様式化されたいつもの文楽の舞台装置とは大きく趣が異なり、対比も鮮やかです。
ここで不破留寿之太夫役の桐竹勘十郎、春若役の吉田和生も稽古に加わり、人形は手に持たずに大まかな段取りを確認していきます。やがて陽気な女房ふたりも現れて、プレイボーイきどりの不破留寿と、すったもんだの恋の鞘当て。ここは曲調も軽快に、シェイクスピアの言葉遊びを意識して韻を踏み、テンポよく展開していきます。
立ち回りでは「床」(義太夫と三味線)は入らず、パーカッション(鳴り物)のみ。やがて上下(左右)から、またしても大がかりな装置が……

遊び心あふれる大胆な居酒屋

場面変わって、お早の居酒屋。劇場の高さをめいっぱい活かした居酒屋のセットは、異国情緒あふれるスタイリッシュなつくりです。上部には赤ちょうちんがぶら下がるほか、目をこらすとちゃんとお品書きが。しかも目を凝らせば、「おでん」「ししゃも」「えだまめ」など〈ザ・居酒屋〉なメニューと共に、「ろーすとびーふ」「ふらいどちきん」「ふぃっしゅあんどちっぷす」なんてラインナップも発見!なぜか「かばーぶ」なんてのも。ん?トルコ料理? ともあれ、お早の居酒屋は〈英国パブテイストの無国籍料理自慢〉であることが判明しました。この遊び心にもご注目を。



居酒屋には様々な仕掛けが施されています。不破留寿が登場してひと暴れすると、あんなところがこんなことになったり。リハーサルでは危険がないかを注意しながら、装置と仕掛けの調整が続きました。影絵を利用した背景も大胆な美しさ。この場面でラストの伏線にもなる不破留寿と春若の問答があるのですが、詳しくは本番を観てのお楽しみです。

……と、開幕前にご紹介するのはここまでにしておきましょう。美しさと創意工夫にあふれた舞台装置という「器」に、義太夫と三味線、人形が加わると、いったいどれほど豊かな世界が広がるのか。不破留寿の太鼓腹以上に期待は膨らむ一方です。

開幕へ、いざ!

 

2014年9月3日

人形ができるまでを公開!

 いよいよ開幕まであとわずか!ではありますが、今回新たに作られた不破留寿くんの人形が
できるまでの様子を見ていただきましょう。皆さんが目にされる人形には、これだけの知恵と工夫と熱意が詰まっているのであります。ちなみにこれはポスター撮影に至るまでの過程ですので、本番ではさらに進化した不破留寿くん人形が登場します。お楽しみに!

かしらはこうして作られる

    
かしら作りのはじめの一歩は、石膏の型をもとにヒノキの木を粗彫りするところから。

顔にはどんな表情をつけるか?ネムリ目、ヨリ目、下り眉、口アキなど、仕掛けを使って動かした時の表情を、デザインスケッチに従って考えていきます。



不破留寿の人形を遣う桐竹勘十郎は「動きはつけられるだけつけてほしい」とリクエストしたそうで、「指がこんがらがると思いますけど全部動くようになっています!」とのこと。

目や口が開く仕掛けがある時には、目も口もくり抜くというわけです。眉毛と髭の土台は真鍮製。 仕掛けを動かすヒモに見えるのはクジラの髭です。貴重なものなので大切に使っています。


 ツヤツヤの顔に目も入って、ずいぶん人形らしくなってきました。胡粉(ごふん)を塗ったうえで顔色をつけます。
不破留寿くんの場合は「たまご色」と言われる顔色。いい具合に酒ヤケもしているようで??

 
 床山係がヤクの毛を植えていきます。金メッシュ入りですよ。「あっ、そこは写さないで…」という不破留寿くんの心の叫びが聞こえてきそうですが頭頂部は見なかったことにしてください。


前を向くとこんな感じ。ファンキー!美術・人形のデザインを担当した石井みつるこだわりのピアスも揺れてます。

衣装作り、人形拵え、そして撮影!

石井みつるのデザイン画に従って衣装の生地選び。手間のかかる飾りもしっかり縫い付けていきます。普段扱う生地とは勝手も違うため衣装係も施行錯誤しつつ、デザイン画のイメージを再現すべく奮闘中!

人形に衣装を着せるのは、その役を遣う主遣いの大切な仕事。これを人形拵(ごしら)えと呼びます。勘十郎が丸胴と呼ばれるぽってり太鼓腹の人形に衣装を着せていきます。
難しい衿付けはもっとも神経をつかうところです。

 さて、ついにポスター撮影の当日。監修の鶴澤清治も加わり、石井、勘十郎と打ち合わせしながら人形にさらに手を加えていきます。
清治のリクエストによって、顔にシワやシミが加えられ、モサモサ胸毛もつけられ、ますます大酒のみの豪快なおっさんぶりが強調されることに。撮影時のレポートはコチラをご覧ください。

 不破留寿くんの人形のお披露目は、もうすぐです!!

2014年9月2日

石井みつるが語る『不破留寿之太夫』② デザイン画も公開!

石井みつるが手がけた美術と衣装には、大胆なアイディアと、文楽の「和」とシェイクスピアの「洋」を融合させるためのさまざまな工夫が凝らされています。

  

フォルスタッフのように奔放に 

 舞台装置は立体的に、ダイナミックなものを考えました。あまり詳しく紹介してしまうと興ざめですからチラリと明かしますと、枯れ木が桜の木となり、枝の上にハル王子=春若がいて、木の下にはフォルスタッフ=不破留寿之太夫が寝ている……といったイメージです。 

                                                  石井みつるによる装置デザイン画

 

  衣装ですが、日本と西洋のものはまったく違うようでいて、実はかなり共通点もあるんです。たとえば17、8世紀の中世ヨーロッパで流行した「ニッカボッカ」と、日本の「たっつけ袴」が非常に似ているんですね。当時流行り出したタイツやブーツは、日本でいえば「脚絆」に近い。脚絆の代わりにルーズソックスを履かせるつもりです。女房たちの衣装もドレープのあるヨーロッパ風のスカートをイメージしつつ、絵柄を日本風にしたり、着物の要素を取り入れたり、両方の要素を取り入れてデザインを考えました。不破留寿之太夫のポイントは繰り返しますが「へそピアス」です(笑)。

 

                                                      不破留寿之太夫のスケッチ

 

 監修の(鶴澤)清治さんからは思いのほか「自由に」とおっしゃっていただき、フォルスタッフが自由気ままに生きたように、私のほうも自由奔放にデザインさせていただけたことを非常に感謝しております。シェイクスピアの仕事をずいぶんやってきましたが、海外の友人たちは文楽でシェイクスピアをやると聞くと非常に驚き、興味を持ってくれますね。この作品を国際的にも上演できたら素晴らしいのではないかと思っています。

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制作者・出演者が語る『不破留寿之太夫』

2014年8月30日

河合祥一郎が語る『不破留寿之太夫』②

 どうしようもない女好きの飲んだくれが、現代日本のありようにも鋭く迫る本音をぶちまけるとは、ちょっと意外でしょうか? 脚本を手がけた河合祥一郎が、フォルスタッフ=不破留寿之太夫に託した思いを、引き続きご紹介します。


シェイクスピアと日本の古典の共通項

 今回のお話をいただいた時にはまず「大変だ!」と思いましたが、実際に脚本に取りかかってみると、日本の古典とシェイクスピアには相通じる部分が多いことをあらためて感じました。たとえば、今回「お早」と「お花」として登場させている『ウィンザーの陽気な女房たち』の2人の女房はフォルスタッフに色仕掛けで迫りますが、このあたりは『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の「道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)」のやりとり(橘姫とお三輪)を利用すると、非常にしっくり行くんです。
 不破留寿の「名乗り」は狂言風に始まりますし、シェイクスピアの時代の舞台と、日本の能・狂言の何もない舞台とはとてもよく似ています。今回、石井みつるさんの装置はかなりリアリスティックなものになるそうですから、より現代的なフォルスタッフが期待できるのではないでしょうか。コスチュームについても、シェイクスピア時代のファッションと日本はとても近い部分があるとの石井先生のお話に感動しました。


人間の「生き方」を考える

 シェイクスピアが作品の中で一貫して問いかけているのが、「人間とは何か」「なぜ人間は生きるのか」ということです。酒好きで女好きなフォルスタッフの生き方は、ハル王子とは正反対に不真面目でふしだらだと私たちは考えがちです。でも作品をよくよく読み込むと、フォルスタッフはことあるごとに「本当にそうだよね」と頷けることをたくさん言っています。私たちは欲しいものも我慢して真面目に生きることに慣れてしまい、気がつけば年をとっていた、という人生を送ることが多い。でもフォルスタッフは本能のままに、欲しいものは「欲しい」と言って生きています。かなり問題を含んではいるけれど、彼の生き方には実は大いに考えさせられるところがあるのではないか。喜劇ではありますが、単にお芝居を観て笑うというよりも、そうしたことまで思いを馳せていただけるものになればと思います。
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制作者・出演者が語る『不破留寿之太夫』

2014年8月29日

鶴澤清治が語る『不破留寿之太夫』②

いよいよ開幕が近づいてきた『不破留寿之太夫』。監修・作曲の鶴澤清治が語る意気込みをさらにお届けしましょう。


「規格外」のフォルスタッフ

 不破留寿之太夫=フォルスタッフのような人間は、たぶん今までの文楽には出て来なかったんじゃないでしょうか。春若=ハル王子のような侍は、時代物によく出てくるので、従来の表現方法を利用できるのではないかと思いますが、とにかくフォルスタッフは規格外です。河合先生の脚本、石井先生の美術ともに素晴らしいものにしていただきましたので、作曲のほうも頑張りませんと。僕の中には〈イングランドの草原〉という全体的なイメージがありまして、「義太夫、三味線の肩衣(かたぎぬ)も、草原の続きのグリーンにしてください」などと勝手なことばかり言っています。


文楽初体験の方にもぜひ!

 河合先生もおっしゃるように、フォルスタッフは人間誰もが持っている欲望の持ち主です。ほとんどの方に共感していただけるのではないでしょうか。だからこそ、太夫の語りがそこに達することが大切です。『不破留寿之太夫』では字幕はつけませんから、お客様に一字一句逃さず聞いていただけるように、今回不破留寿を語る(豊竹)英大夫くんにも切にお願いしています。素顔の彼は不破留寿にかなり近い人物ですから、「君の人間をそのまま出したら行けるから、頼むよ!」と言ってますけど(笑)。
 ただの放蕩オヤジではなく、ある意味では気品のようなものもなくてはならず、とにかく愛嬌があって、みんなに愛される。そういう人物を表現するのは非常に難しいことですが、そこを目指して全員で頑張ります。
 日本語がわかる方でしたら誰でもわかる作品ですので、文楽を観たことがないという方にも、ぜひ観に来ていただきたいですね。

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制作者・出演者が語る『不破留寿之太夫』

チケットのお申込み

新作文楽 不破留寿之太夫

2014年9月6日(土)~9月22日(月)

電話・インターネット予約開始 8月7日(木)10時~

電話からのお申し込み
国立劇場チケットセンター (午前10時~午後6時) 0570-07-9900 | 03-3230-3000 (PHS・IP電話)
一般のみ取扱
チケットぴあ 0570-02-9999
インターネットからのお申し込み
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※この公演では、インターネット予約の際、座席選択がご利用いただけます。

一般のみ取扱
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販売窓口はこちら 窓口販売開始  8月8日(金)10時~

国立劇場チケットセンター (午前10時~午後6時)

アクセス

アクセスマップ

〒102-8656東京都千代田区隼町4-1
TEL:03-3265-7411(代表)
半蔵門線 半蔵門駅 1番出口から 徒歩約5分
有楽町線/半蔵門線/南北線 永田町駅
4番出口から 徒歩約8分
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