歌舞伎公演ニュース
2023年9月6日
<初代国立劇場
さよなら特別公演>
【9月歌舞伎公演】
『妹背山婦女庭訓』<第一部>
好評上演中
9月26日(火)まで!
(舞台写真あり)
10月末に閉場を迎える初代国立劇場。
9月・10月の歌舞伎公演は、〈初代国立劇場さよなら特別公演〉として、義太夫狂言屈指の名作『妹背山婦女庭訓』を、2か月にわたる通し上演でお楽しみいただきます。
9月の第一部では、名場面「吉野川」と、その物語の背景が描かれる「小松原」「花渡し」を上演いたします。
舞台写真とともに、見どころをご紹介します。
序幕「春日野小松原の場」
[右]太宰息女雛鳥(中村梅枝)、[左]久我之助清舟(中村萬太郎)
[中央]腰元小菊(市村橘太郎)ほか
故太宰少弐の娘・雛鳥(中村梅枝)は、小菊(市村橘太郎)ら腰元たちと小松原に散策に出ています。そこで、狩猟帰りの美青年と出会い、二人は互いの素性を知らず恋に落ちます。
そこへ、雛鳥を妻にしたいと願う、蘇我入鹿の家臣・宮越玄蕃が現れ、この青年が雛鳥の家と不仲である大判事清澄の息子・久我之助清舟(中村萬太郎)であることを告げます。
序幕「春日野小松原の場」
[左より]久我之助清舟(中村萬太郎)、采女の局(坂東新悟)
驚いた雛鳥たちは立ち去り、玄蕃も去った直後、藤原鎌足の娘で帝の寵愛を集めていた采女の局(坂東新悟)が宮中から逃げて来ます。入鹿の妹・橘姫を立后しようと企む勢力から逃れるため、采女の局は父・鎌足を頼ろうとしてきたのでした。局の守護役・久我之助は、采女の局を守るためにどこかへ逃がします。
二幕目「太宰館花渡しの場」
[右より]太宰後室定高(中村時蔵)、大判事清澄(尾上松緑)
[中央奥]蘇我入鹿(坂東亀蔵)
太宰少弐の後室定高(中村時蔵)が守る館を訪れた蘇我入鹿(坂東亀蔵)は、大判事清澄(尾上松緑)を呼びつけ、采女の局が猿澤の池に入水自殺したという噂は久我之助の偽装で、本当は匿っているのだろうと居場所を問いただします。また、入鹿は、久我之助と雛鳥が親密な関係であることから定高にも疑いの目を向けます。
二人は潔白を主張しますが、入鹿は、大判事には息子の久我之助を自分に仕えさせるよう、定高には、娘の雛鳥を差し出すように命じます。
さらに、家臣に香具山の頂上から、両家の様子を遠眼鏡で見張るよう言い付けます。そして、命令に背けば両家の命運はないと子の命を花にたとえ、定高と大判事に桜の枝を渡します。
三幕目「吉野川の場」
[左より]太宰息女雛鳥(中村梅枝)、久我之助清舟(中村萬太郎)
桜満開の吉野川を隔てて、妹山には定高の別邸、背山には大判事の山荘があり、雛鳥と久我之助は逢瀬を交わしていました。
三幕目「吉野川の場」
三幕目「吉野川の場」
太宰後室定高(中村時蔵)
三幕目「吉野川の場」
大判事清澄(尾上松緑)
定高と大判事は、桜の枝を持ってそれぞれの館に戻る道中、吉野川の両岸から声をかけ合います。そして、お互いの子が命令に従い、入鹿の元へ行くと決めたら、花を散らさずに桜の枝を川へ流すが、命令に背く場合は子を手にかけ、花を散らして枝だけを流すと約束したのです。
この場面では、下手側の本花道と上手側の仮花道が、吉野川沿いの堤となり、二本の花道に挟まれた客席は吉野川に見立てられます。両花道で繰り広げられる定高と大判事のやり取りを通して、客席全体が桜満開の吉野川に転じます。
三幕目「吉野川の場」
[右より]大判事清澄(尾上松緑)、久我之助清舟(中村萬太郎)
妹山では、久我之助の命を救いたいならば入内するようにと定高が雛鳥を説得します。久我之助への愛を貫いたとしても、入鹿に背くことになり、久我之助も死から逃れることはできないため、雛鳥は説得を受け入れます。
一方、背山では、久我之助が大判事に采女の局を逃がしたことを明かし、切腹の許しを乞います。大判事も、息子を入鹿の元へ送り辱めを受けさせることよりも、名誉ある切腹をさせることを覚悟します。久我之助は、自分が死んだことを知った雛鳥が後を追うことを恐れ、入鹿の命令に従ったように定高に知らせて欲しいと大判事に頼みます。大判事は、入鹿の命令に従ったことを表わす花の咲いた桜の枝を川へ流します。
三幕目「吉野川の場」
[右より]太宰後室定高(中村時蔵)、太宰息女雛鳥(中村梅枝)
妹山では、不意に落ちた雛人形の首を見た定高が、雛鳥は死すべき運命であると悟り、入内させず、首を切って入鹿の元に届けることを告げます。雛鳥も久我之助への愛を貫き死ぬことができることを喜びます。
大判事の流した桜の枝を見た雛鳥は、久我之助の無事を喜び、定高も同じく花の咲いた桜を流すと、久我之助は雛鳥が無事であることに安堵しますが……。
三幕目「吉野川の場」
[左より]太宰後室定高(中村時蔵)、大判事清澄(尾上松緑)、
久我之助清舟(中村萬太郎)
久我之助と雛鳥の運命はいかに!
敵対する両家に芽生えた若い男女の恋の行方、子への情愛と節義の間で揺れ動く定高と大判事。
波乱に富む物語の全容は、ぜひ劇場でお楽しみください。
女方・立役ともに最高峰の難役である、太宰後室定高を時蔵が、大判事清澄を松緑がともに初役で演じるほか、華やかな顔ぶれが揃います。
初代国立劇場の掉尾を飾るにふさわしい名作で、国立劇場ならではの通し狂言の魅力をご堪能ください。
皆様のご来場をお待ちしております。
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