歌舞伎公演ニュース
2022年4月28日
【6月歌舞伎鑑賞教室】
『彦山権現誓助剣
-毛谷村-』
中村又五郎、片岡孝太郎が
意気込みを語りました!
令和4年6月、第101回を迎える歌舞伎鑑賞教室では、宮本武蔵がモデルともされる剣の達人・毛谷村六助と、その許婚・お園が出会い、敵討ちのために力強く旅立つ姿を描いた時代物の名作『彦山権現誓助剣-毛谷村-』を上演します。
公演に先立ち、毛谷村六助を勤める中村又五郎、一味斎娘お園を勤める片岡孝太郎が意気込みを語りました。
[左より]片岡孝太郎、中村又五郎
中村又五郎
(毛谷村六助)
平成2年(1990)に国立劇場で初めて毛谷村の六助を勤めさせていただきました。その時は、中村吉右衛門のお兄さんにお稽古をしていただき、また、お幸には先代の(二代目)中村又五郎のおじ様に出演していただきました。その後、平成24年(2012)に私の三代目又五郎襲名の博多座公演でも六助を勤めさせていただきましたが、その際は吉右衛門のお兄さんが斧右衛門でご出演くださり、毎日教えをいただいた思い出がございます。
六助は、正義感があって根は優しく力持ち。急に子供を預かることになったり、奥さんになりますと言う女性が現れたりといった場面もあります。そして、自分の剣術の師匠が微塵弾正という悪者に討たれたことを知った時に、いかに怒りを出せるか、そこの山場にもっていくのが大切です。また、後半の(三味線の旋律に乗せて語る)“乗地”(のりじ)では、お客様が心地よく見ていただけるように勤めたいと思っています。
人形浄瑠璃を原作とした〈義太夫狂言〉ですが、柔らかく親しみのある“世話”の部分もあって、学生の方にも楽しんでいただけるお芝居です。今回は、最初に微塵弾正が見ず知らずの村のおばあさんを使って六助を騙しに来る場面から上演するので、初めて歌舞伎をご覧になるお客様にも分かりやすくなっています。
歌舞伎鑑賞教室は10回目の出演となりますが、年々真剣に見て楽しんでくれる学生さんたちが多くなってきているなと実感しています。こうした機会に、少しでも日本の古典芸能に触れていただいて、成人されてからも記憶に残るようになればと願っています。
今回は息子の中村歌昇が微塵弾正実ハ京極内匠、孫の小川綜真(そうま)が一味斎孫弥三松を勤めさせていただきます。こうして親子3代で共演できるのは、ありがたいことです。歌舞伎鑑賞教室は1日2回公演ですので、綜真には家での休養や一日の流れなどのペース配分を教えて、父親や祖父でしっかり見てあげないといけないかなと思っております(笑)。
片岡孝太郎
(一味斎娘お園)
私は11回目の鑑賞教室出演で、いろいろな思い出がございます。又五郎のお兄さんとは、平成10年(1998)に『傾城反魂香』でご一緒させていただいて以来になります。お園はこのところ度々演じていて、父の吉岡一味斎が討たれる場面を含んだ通しでの上演にも参加しましたので、今回演じるにあたり、前の場面など全体的なストーリーが伝わるように頑張りたいと思っています。
数ヶ月前の舞台で、中村時蔵のお兄さんのお孫さんの小川大晴くんを抱っこしましたし、今度は又五郎さんのお孫さんの綜真くんを抱っこします……今年は抱っこの年ですね(笑)。
お園は最初、虚無僧(こむそう)の姿で出てきて男性のふりをしていますが、六助に見抜かれるところで、まず変わります。自分の敵だと思って六助に切り掛かっていったお園ですが、話を聞いているうちに、敵ではなく心惹かれる素敵な人だと……。イメージ的には“ガチッ”と剣術に優れた女性が“ハッ”と可憐な恋心をのぞかせる、その変わり目では、笑いが起こるぐらいにわかりやすく演じたいなと思います。
歌舞伎は“生もの”で、その日によってお客様の反応が違います。初めてだからノリが悪いかというとそうでもないですし、学生さんたちの感性もあります。「今こちらを見てくれているな」というところでハートを掴めるように、そして少しでも歌舞伎のファンになって「また見たいな」と思っていただけるように勤めるのが、この鑑賞教室での私たちの役目だと思っています。
昭和63年(1988)の鑑賞教室『毛抜』で、吉右衛門のお兄さんとご一緒させていただいた時のことです。ある日、女子校のお客様が大勢いらっしゃって、大向うさんの掛ける「播磨屋!」と言う声を真似して、大きく見得をした途端、可愛く声を揃えて「せーの、はりまやー」と! そうしたらお兄さんも可笑しくなっちゃって、後ろ向きになったところで、こらえきれずにニコニコされていたのを、今でもよく覚えています。
歌舞伎鑑賞教室は、解説付きで歌舞伎の代表的な演目をお楽しみいただける公演です。価格もお手ごろで、観劇の手引きになる豆知識をまとめた歌舞伎読本やプログラムの無料配布もございます。孝行と武道に生きる主人公たちが活躍する『彦山権現誓助剣―毛谷村―』は明るく心温まる名作で、初めての歌舞伎観劇にもぴったりです。
また、お勤め帰りにもご観劇いただきやすい金曜午後6時30分開演の「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」(10・17日)や、静岡公演(23日)・神奈川公演(25・26日)もございます。感染症対策を徹底し、皆様のご来場をお待ちしております。
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◇舞台写真を公開しました。みどころはこちら
◇弥三松役で大健闘中! 小川綜真くんにインタビューしました
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