歌舞伎公演ニュース

2023年7月5日

【7月歌舞伎鑑賞教室】

『双蝶々曲輪日記―引窓―』好評上演中、
24日(月)まで!

(舞台写真あり)

 初代国立劇場最後の〈歌舞伎鑑賞教室〉の幕が開きました。
 国立劇場では、開場翌年の昭和42年(1967)から、学生・生徒の芸術鑑賞の機会として、また、大人の方にとっても初めて歌舞伎に触れていただく場として、歌舞伎の代表的な演目を歌舞伎俳優による解説付きでご覧いただく、歌舞伎鑑賞教室を開催してきました。

 最後の演目は、互いを想いやる家族の絆が心に沁みる不朽の名作『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)―引窓(ひきまど)―』です。本編の前に分かりやすい解説が付き、名作をお手頃な価格(学生1,800円、一般3,000円~)でお楽しみいただけるチャンスです。  
 舞台写真とともに、公演の魅力をご紹介します

◆◆◆

 解説「歌舞伎のみかた」のご案内は、澤村宗之助です。歌舞伎独特の表現技法の解説などを交えながら、今回上演する「引窓」を鑑賞していただく上で重要なポイントを丁寧にご紹介します。歌舞伎が初めての方も、楽しく気軽にご鑑賞いただけます。



解説「歌舞伎のみかた」
(澤村宗之助)

 解説の後は、いよいよ『双蝶々曲輪日記―引窓―』の上演です。
 舞台は京都の石清水八幡宮にほど近い八幡(やわた)の里。中秋の名月の前夜(旧暦8月14日)に、相撲取りの濡髪長五郎(中村錦之助)が久しく会っていなかった産みの親であるお幸(中村梅花)を訪ねて来ます。



[左より]女房お早(市川高麗蔵)、
濡髪長五郎(中村錦之助)、
母お幸(中村梅花)

 思わぬ再会に大喜びのお幸は、濡髪をもてなし、二階で休ませます。そこへ、南与兵衛(中村芝翫)が意気揚々と帰宅してきます。与兵衛は、お幸の再婚相手の子で、お幸にとっては義理の息子です。与兵衛は、亡き父の跡を継いで郷代官(村を治める役人)に任命され、父と同じ名である南方十次兵衛を名乗ることを許されたのです。



南与兵衛後ニ南方十次兵衛(中村芝翫)

 十次兵衛は、平岡丹平(中村松江)と三原伝造(坂東彦三郎)という二人の武士と同行していました。丹平と伝造は、十次兵衛に濡髪を召し捕るよう指図し、人相書(指名手配書)を渡します。濡髪は恩人を助けるために、横暴な侍たちを心ならずも殺してしまったのですが、丹平と伝造はその縁者でした。濡髪とお幸が実の親子であることを知らない十次兵衛は、郷代官の初仕事として濡髪を捕らえて、手柄を立てようと意気込みます。



[左より]南方十次兵衛(中村芝翫)、平岡丹平(中村松江)、三原伝造(坂東彦三郎)

 お幸と濡髪の関係を知っていた十次兵衛の妻お早(市川高麗蔵)は、お幸のため、十次兵衛に濡髪の逮捕をそれとなくやめさせようとしますが、かえって十次兵衛を怒らせてしまいます。その時、十次兵衛は明かりが差し込む引窓の下の手水鉢に、お尋ね者の濡髪の姿が映っているのを目撃します。それに気づいたお早は、引窓を閉め濡髪の姿を隠します。また、濡髪を捕縛しようと勇み立つ十次兵衛に、お幸は濡髪の人相書を売ってほしいと言い出します。



[左より]南方十次兵衛(中村芝翫)、濡髪長五郎(中村錦之助)

 十次兵衛は、お幸の思い詰めた様子から濡髪がお幸の実の息子であることを察します。十次兵衛は、お幸に人相書を渡すと、濡髪に聞こえるように逃げ道を告げながら去って行きます。そのやり取りを聞いていた濡髪は自ら捕まると言い出します。お幸は、十次兵衛の情けを無駄にせず逃げるように頼み、人相を変えるため濡髪の前髪を剃ります。しかし、父親譲りの頬の黒子(ほくろ)だけは剃ることができません。そのとき……!



[左より]女房お早(市川高麗蔵)、濡髪長五郎(中村錦之助)、
[中央奥]母お幸(中村梅花)

場面の通称でもある「引窓」は、明かり採りのための天窓のこと。引窓から差し込む月の光が物語を思わぬ方向へと導きます。



[左より]女房お早(市川高麗蔵)、濡髪長五郎(中村錦之助)、
南方十次兵衛(中村芝翫)

 石清水八幡宮などにゆかりの風物詩を巧みに織り込みながら、家族のために心を尽くす人物の姿をこまやかに描いた古典作品です。中村芝翫、中村錦之助、市川高麗蔵をはじめ、感動の舞台を充実した顔ぶれでお送りいたします。
 登場人物たちの義理と人情が葛藤する物語の全容はぜひ劇場で!

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 なお、午後6時30分開演でお勤め帰りにオススメの「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」(6日(木)・20日(木))や、親子割引でお求めやすい「親子で楽しむ歌舞伎教室」(16日(日)・20日(木)~24日(月))もございます。

 皆様のご来場をお待ちしております。

【公演関連トピックス】
中村芝翫、中村錦之助、市川高麗蔵からのメッセージ動画(YouTubeへのリンクです)
中村芝翫、中村錦之助、市川高麗蔵が意気込みを語りました!

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