歌舞伎公演ニュース

2019年3月6日

【3月歌舞伎】

『元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―』『積恋雪関扉』
好評上演中!

 初日より連日ご好評いただいている3月歌舞伎公演。本公演は、「日本人と自然」をテーマに全国各地で展開される文化芸術の祭典「日本博」の幕開けを飾る公演です。
 『元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)―御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)― 』と『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』―― 古来日本人に愛され、日本人のこころに寄り添う「桜」が印象に残る二作品を上演しています。

◆◆◆

◎『元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―』 
 ◎『積恋雪関扉』はここをクリック

 赤穂浪士の討ち入りを血の通った人間ドラマとして描いた真山青果の新歌舞伎『元禄忠臣蔵』。今回上演している「御浜御殿綱豊卿」は、全10篇中の第5篇にあたります。

 浅野内匠頭が起こした刃傷事件から1年。旧暦の三月上旬、甲府侯・徳川綱豊(中村扇雀)の別邸(現在の浜離宮恩賜庭園)では、年に一度の「お浜遊び」が催されています。


第一幕「御浜御殿松の茶屋」
徳川綱豊卿(中村扇雀)

 ほろ酔い機嫌の綱豊は、側室・お喜世(中村虎之介)から、お喜世の義理の兄・富森助右衛門(中村歌昇)が催しの隙見を申し出ていることを聞きます。助右衛門が赤穂浪士であること、そして、彼らが主君・内匠頭の敵と狙う吉良上野介が今回の招待客にいることに思い当たった綱豊は、助右衛門の隙見を許します。酒に酔い、くつろいだ様子の綱豊ですが、時折見せる鋭い洞察に聡明さが垣間見えます。


第二幕「御浜御殿綱豊卿御座の間」
(左より)新井勘解由(中村又五郎)、徳川綱豊卿(中村扇雀)


第二幕「御浜御殿綱豊卿御座の間」
新井勘解由(中村又五郎)

 実現すれば討ち入りが不可能となる浅野家再興を依頼されている綱豊は、討ち入りの成就を願う思いとの間で苦悩し、学問の師・新井勘解由(中村又五郎)に心中を打ち明けます。師との対話を通して、討ち入りを支持したいという思いを強くする綱豊。主従、師弟の関係を越えた二人の絆が窺えます。

 隙見を許された助右衛門は、御殿の中に案内されます。江戸に不慣れな無骨者を装い、好奇心と見せ掛けて邸内について尋ねる姿は、宿敵・吉良を討ちたいという強い思いを感じさせます。


第二幕「御浜御殿元の御座の間」
(左より)富森助右衛門(中村歌昇)、中臈お喜世(中村虎之介)、
徳川綱豊卿(中村扇雀)

 赤穂浪士たちの真意を確かめたい綱豊は、助右衛門を御座の間に召し出します。本心を明かそうとしない助右衛門に、綱豊は謎を掛け、あるいは挑発的に問い掛けます。問い詰められた助右衛門は、逆に未来の将軍職就任について、綱豊の心底を問い質します。火花を散らす二人の問答から目が離せません。


第二幕「御浜御殿元の御座の間」
(左より)富森助右衛門(中村歌昇)、徳川綱豊卿(中村扇雀)


第二幕「御浜御殿元の御座の間」
(左より)中臈お喜世(中村虎之介)、富森助右衛門(中村歌昇)

 ついに綱豊は、討ち入りが不可能となる浅野家再興を将軍に願い出ると告げ、去ります。うろたえる助右衛門。次第に暗くなっていく座敷の中に、闇討ちを決心する助右衛門と、兄の心中を察し、協力を決心したお喜世の思いが浮かび上がります。


第二幕「御浜御殿御能舞台の背面」
(左より)富森助右衛門(中村歌昇)、徳川綱豊卿(中村扇雀)

 吉良が夜能で『望月』のシテを勤めると、お喜世から聞いた助右衛門は物陰に潜みます。楽屋から出てきたシテに槍を突き出す助右衛門でしたが……。
 満開の夜桜の下、討ち入りの大義を説く綱豊の台詞に浪士たちへの深い思いが滲みます。

 今回、扇雀が綱豊を初役で勤め、又五郎が18年ぶりに勘解由を勤めるほか、歌昇の助右衛門、虎之介のお喜世など新鮮な配役により、力強い舞台が展開します。

◆◆◆

◎『積恋雪関扉』  ◎『元禄忠臣蔵 ― 御浜御殿綱豊卿 ― 』はここをクリック

 本作は、天明4年(1784)11月江戸桐座で『重重人重小町桜(じゅうにひとえこまちざくら)』の一場面として初演されました。現在では独立した舞踊劇として上演され、歌舞伎舞踊の傑作として知られています。大伴黒主や小野小町など、平安時代の歌人として知られる人物たちが登場する上下二巻構成の大曲です。


関守関兵衛(尾上菊之助)

 雪の積もる逢坂の関(山城国〈現在の京都府〉と近江国〈現在の滋賀県〉の国境の関所)では、時ならず「小町桜」が咲き誇っています。その桜の下で刈った柴を束ねているのは、関守の関兵衛(尾上菊之助)。風格と洒脱さを兼ね備えた姿で、煙管を手に極まります。


(左より)小野小町姫(中村梅枝)、
良峯少将宗貞(中村萬太郎)

 そこに小野小町姫(中村梅枝)が恋人の良峯少将宗貞(中村萬太郎)を尋ねて、関所を訪れます。関所の手形を持たない小町姫に関兵衛は問答を仕掛けます。関兵衛と小町姫の可笑しみのある問答、小町姫と宗貞の恋模様と続きます。
 二人の間に入った関兵衛は、不意に懐中の品を取り落とし、怪しい素性を垣間見せます。


(左より)関守関兵衛(尾上菊之助)、小野小町姫(中村梅枝)、
良峯少将宗貞(中村萬太郎)

 関兵衛が茶目っ気たっぷりにその場を取り繕うと、緊迫した空気から一転、理屈抜きで楽しめる三人の大らかな手踊りとなります。

 酒に酔って千鳥足の関兵衛は、大盃に映る星影を見て表情を一変させます。力強い見得は、スケールの大きな悪人の本性を感じさせます。天下調伏の祈祷のため桜を伐ろうとした関兵衛ですが、突然放心します。すると、小町桜の木に妖艶な傾城墨染(中村梅枝)の姿が浮かび上がり、舞台に夢幻的な雰囲気が漂います。


(左より)関守関兵衛(尾上菊之助)、傾城墨染(中村梅枝)

 関兵衛に逢いに来たと色めいた様子を見せる墨染は、華やかに踊りながら遊里の風俗を描写します。やがて墨染に正体を怪しまれ、詰め寄られた関兵衛は、ついに謀反人・大伴黒主であると名乗ります。墨染もまた、黒主に「何奴だ」と迫られ、小町桜の精の本性を顕します。二人が一瞬で衣裳を変化させる「ぶっ返り」は、歌舞伎ならではの優れた演出です。


(左より)小町桜の精(中村梅枝)、大伴黒主(尾上菊之助)

 黒主は大まさかりを、小町桜の精は桜を手に激しく争います。美しくも迫力のある振りが続き、舞台から目が離せません。また、屈指の大曲と言われる常磐津節の演奏も、幕切れに向けてさらに盛り上がります。

 菊之助が関兵衛実ハ黒主を初役で勤めるほか、梅枝の小町姫・墨染実ハ小町桜の精、萬太郎の宗貞と初役揃いの顔触れが歌舞伎舞踊の大曲に挑んでおり、清新で熱気に溢れる舞台が繰り広げられています。


◆◆◆

 3月歌舞伎公演は、12年ぶりの小劇場での上演です。大劇場とは趣の異なる魅力を味わえる「小劇場歌舞伎」。俳優や演奏家の息遣いをより身近に感じられる濃密な劇場空間で、歌舞伎の醍醐味をお楽しみください。
 また、今月は、通常の公演と異なり、19日(火)を除く火曜・土曜と、祝日前日の20日(水)に、17時開演の部もございます。さらに、19時過ぎから『積恋雪関扉』を鑑賞できるお得な特別当日券「アフター7 KABUKI」もございます。お勤め帰りの皆様は、この機会にぜひ、舞台に桜が咲き誇る国立劇場の歌舞伎へお越しください。

 3月歌舞伎公演『元禄忠臣蔵』『積恋雪関扉』は27日(水)まで
※10日(日)・11日(月)は休演
12時開演(15時40分終演予定)・17時開演(20時40分終演予定)



チケット好評販売中!

国立劇場チケットセンターはこちら ≫