歌舞伎公演ニュース

2021年5月26日

【6月歌舞伎鑑賞教室】

『人情噺文七元結』

中村扇雀、尾上松緑が
意気込みを語りました!

 令和3年6月歌舞伎鑑賞教室では、落語をもとにした涙あり笑いありの人情劇の傑作『人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)』を上演します。
 公演に先立ち、女房お兼を勤める中村扇雀、左官長兵衛を初役で勤める尾上松緑が意気込みを語りました。


(左より)尾上松緑中村扇雀

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中村扇雀
(女房お兼)

 新型コロナウイルスの影響がまだ続く中ですが、歌舞伎を含め演劇の上演が徐々に始まり、私自身も客席から舞台を少しずつ観るようになって、今お客様が舞台の芸術、舞台の楽しさを求めていらっしゃることを肌で感じています。そして、お客様の前で演じるということの素晴らしさ、大切さというものも改めて感じています。昨年11月に父(坂田藤十郎)を亡くし、新たにスタートをする、初心に帰って前を向いて進んでいくという気持ちでいっぱいです。

 今回、松緑さんと共演させていただきます。松緑さんは菊五郎劇団を中心に活躍されていて、私は関西や中村座、コクーン歌舞伎といった舞台が多かったので、なかなかご一緒する機会がありませんでした。一昨年6月に博多座で共演した際、松緑さんから直に「お兄さん、僕とやってよ」と(笑)! こうしてコンビを組めるのは本当に楽しみです。上方や江戸という区別なく、歌舞伎俳優は全員一丸となって、歌舞伎の面白さを後世に残していかなくてはいけませんから、本当にありがたい機会をいただいたと思っています。

 お兼は亡くなった(十八代目中村)勘三郎兄さんの長兵衛で何度も勤めてきましたが、これは本当に相手によって全てが変わってくるお芝居です。「以前はこうだった」などというのは一切抜きにして、ゼロから台本を読み直します。新たにお兼の心境を考えて、松緑さんの長兵衛と、喧嘩しているけれど実は仲の良い、お互いを信頼しているという素敵な夫婦を創れたらと思っています。

 長兵衛は娘のこと、女房のことを腹の中では大事に思っているのですが、それを口に出して言うタイプでは無いですね。お兼には「この人の帰るところは私しかない」という姉さん女房的なところが根底にあると思います。亭主にひどいことを言ったり怒ったりしますが実は大好き、お兼はそういう女性だと思います。

 『文七元結』のような生世話物(きぜわもの)は会話のリズムが早いので、“相手が話したセリフは、はじめて聞く言葉”という感覚をとにかく失わないように気を付けています。会話劇の怖いところは、ともすると感情がついていかないことです。会話のテンポはもちろん大切ですが、やはり相手に言われた言葉に、自分の次の言葉が反応するという感覚を研ぎ澄ませながら勤めなければいけません。

 鑑賞教室には随分出演させていただいておりますが、現在、衣裳で私を担当してくれている方は、高校時代に鑑賞教室で私の『封印切』を観て、「歌舞伎の仕事がしたい」と思ってくれたそうです。歌舞伎鑑賞教室の意義はとても大きいものです。「歌舞伎ってこんなに楽しい」「歌舞伎のある日本に生まれて良かった」と若い人たちに思ってもらえるような、素敵な舞台にできたらなと思っております。

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尾上松緑
(左官長兵衛)

 一昨年の博多座で“ラブコール”をさせていただいた扇雀兄さんと、こうして共演させていただくことになりました。(中村)勘三郎兄さんや、(中村)芝翫兄さんを相手にお兼を何度も勤めた経験のある扇雀兄さんがお相手してくださるのはとても頼もしく、またありがたく思っております。
 監修の(尾上)菊五郎兄さんにお稽古をしていただきます。「教えるけれど、これはお前たちのカンパニーで創っていくものだから、いろいろ話し合いながら創っていくといい」と言っていただいています。菊五郎兄さんの教えを守り、また扇雀兄さんにアドバイスをいただきながら、お客様に喜んでいただける舞台にしたいです。

 長兵衛は、角海老(かどえび)という吉原でも有数のお店の仕事も任される腕利きの左官職人ですが、とにかく奥さんや娘に“甘ったれ”なところがあって、許してもらえればどこまででも甘えて度が過ぎてしまう人なのだと思います。娘が身を売る覚悟で作った大事なお金ですら「人の命は金じゃ買えねえ」と、見ず知らずの思いつめた青年に叩きつけて去っていってしまいます。文七が好青年だと見抜く直観力に優れた人でもあり、性格は“江戸っ子気性の潔さ”とも言えますが、それは裏を返せば“江戸っ子の短慮さ”でもあって、そういう長所と短所を併せ持つ人間的な魅力が長兵衛にはあると思います。

 今回はお兄さん世代の扇雀さんに加え、角海老女房お駒には父(三代目尾上松緑)世代の中村魁春のお兄さん、娘のお久には後輩の坂東新悟さんと、三世代の女方さんと場面場面で絡ませていただきます。それぞれに違う世代の女方さんを相手に、一つのお芝居の中で組ませていただく機会はあまりないので、これもとても楽しみですし、勉強になると思っています。

 『文七元結』は生活の一部分を切り取ったようなお芝居です。お客様がご覧になるのは、幕が開いてから幕が閉まるまでのことですが、幕が開く前も長兵衛さんとお兼さんはずっと一緒に生活をしていますし、幕が閉まった後もその世界の中で生きています。ですからお客様に見えている部分だけを演じればいいということではなく、普段の生活感、それこそ小道具にも手慣れていたり、会話の息が合っていたり、といったことがとても大切です。

 また、悪人が登場せず、心が温かくなって全てが丸く収まり“ハッピーエンド”という歌舞伎は、他に無いと思います。コロナ禍のギスギスした時代に、「こんなに“ほっこり”することがあるんだ」と一息ついていただけると思いますし、お芝居を観て劇場を出る時には「お芝居っていいね、嫌なことを一瞬忘れたよ」と思っていただけるのではないでしょうか。

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 歌舞伎鑑賞教室は、解説付きで歌舞伎の代表的な演目をお楽しみいただける公演です。価格もお手ごろで、観劇の手引きになる豆知識をまとめた歌舞伎読本やプログラムの無料配布もございます。落語を原作とした心温まる芝居『人情噺文七元結』は、登場人物たちのテンポの良いセリフのやりとりも面白く、初めての歌舞伎観劇にもおすすめです。
 また、11日(金)と18日(金)には、午後6時開演で、お勤め帰りの方にもご観劇いただきやすい「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」を開催します。

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舞台写真を公開しました。公演の見どころはこちら!

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6月25日(金)・26日(土)午前11時/午後2時30分は
神奈川公演(外部サイトへリンクします)



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