歌舞伎公演ニュース

2021年2月25日

【3月歌舞伎公演】

『時今也桔梗旗揚』

尾上菊之助が
意気込みを語りました!

 3月歌舞伎公演は、《歌舞伎名作入門》と銘打ち、分かりやすい解説付きで歌舞伎の名作の世界へご案内します。今回上演する時代物の傑作『時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)』の主人公は、昨今、新たな脚光を浴びている戦国武将・明智光秀がモデルとなっています。光秀が主君・織田信長に反旗を翻す「本能寺の変」に至る経緯を描いた作品で、劇中では武智光秀と小田春永として登場します。
 中村吉右衛門の監修のもと、尾上菊之助が武智光秀を初役で演じます。公演に先立ち、菊之助が意気込みを語りました。

◆◆◆


尾上菊之助
(武智光秀)

 3月歌舞伎公演の演目の『時今也桔梗旗揚』をお引き受けしたのには、二つの理由がございます。一つは、岳父(中村吉右衛門)が武智光秀を演じた馬盥(ばだらい)の場に憧れ、岳父を通して明智光秀という人物に興味を持っていたことです。そしてもう一つは、先ごろ最終回を迎えたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公も明智光秀でしたが、「反逆者」とされてきた光秀像が、実は天下泰平を望んでいた人物として見直される機運があって、私もドラマのファンでしたし、ちょうどお客様の関心も高まっている今、この役に挑みたいと思いました。

 光秀を演じる上で大事にしなければいけないのは、春永公に対する思い、そして「饗応」「馬盥」「連歌」と繋がっていく心情の積み重ねではないでしょうか。光秀は春永が戦乱の世を治めてくれるだろうと期待して仕えていたのだと思います。ところが、饗応の席で、眉間を割られた上、蟄居させられてしまう。さらに本能寺馬盥の場では、馬盥(馬を洗う時に用いる盥)で酒を飲ませられ、ついには貧しい時に自分の妻が売った切髪を見せつけられて辱められます。その時、自分の過去や春永の独裁など、すべてが心の中でシンクロしてしまったのではないか。主君と家臣の一つのボタンの掛け違いが、すべてを狂わせてしまう……。このような劇的な構造は鶴屋南北の作品ならではだと思います。

 勝者側からは「逆臣」や「反逆者」とされている評価が、敗者側からはまた違って見えてくるところが、歴史の面白いところだと思います。

 最近、永青文庫(東京都文京区)で開催された展覧会で、明智光秀が書いたと言われる書簡を拝見しました。その書は、王道で分かりやすいが、あまり個性的ではなく、非常に実直な人物だということが読み取れるようでした。信長はあくまで強権的で「あそこの陣地へ攻め入ってこい」というような指示だけを出して、実際は光秀のような有能な家臣が計算し尽くして動いたということも資料として残っているようですが、その信長の書簡はというと、非常に豪快な字で書かれていました。戦国の世には、強権的なリーダーシップも必要だったと思うのですが、書簡を見る限り、私自身はどちらかと言うと光秀のタイプなんじゃないのかな(笑)と思いました。


尾上菊之助の武智光秀

 今回の舞台は、岳父に監修していただきます。岳父の芸の大きさ、セリフ回しの鮮やかさ、形の美しさ、私はそういうものに見入っていたのですが、実際にお稽古をしていただきますと、それらはすべて結果であることに気付かされます。「春永への思い」「天下泰平に対する思い」が光秀を耐え忍ぶ男にさせている、ということを学んでいます。

 陰々滅々とした中にも形の美しさを見せるのが歌舞伎です。「饗応」でも、「馬盥」でも、三方(さんぼう)の踏み割りでも、形の美しさを見せるためには内面を積み上げていないと、ただの物真似になってしまいます。三方を踏み割るまでの春永公に対する思いの積み上げ方、そこに演技の成否がすべて詰まっている気がします。

 今回は、本編の前に「入門 歌舞伎の“明智光秀”」と題した、片岡亀蔵さんによる解説があります。史実と歌舞伎の明智光秀の比較などを分かりやすく解説いたします。初めて歌舞伎に触れる方から大河ドラマをご覧になった方、そして歌舞伎ファンの方まで、お楽しみいただければと思っております。

 余談ですけれども、(「麒麟がくる」の主演の)長谷川博己さんとは以前、蜷川幸雄さんの舞台(2008年、シアターコクーン『わが魂は輝く水なり』)でご一緒して以来交流があって、今回、大河ドラマで明智光秀を演じるにあたって、どのような資料を読んでいたのかなど、アドバイスをしていただきました。彼が明智光秀についてどういうふうに思っていたのかは、その資料を通して感じることができたと思っています。

 2月28日には、日本博の特別企画公演『月・雪・花-四季折々のこころ-』にも出演いたします。月は「羽衣」、雪は「鷺娘」、花は「娘道成寺」の男舞、そして最後に「石橋」を舞います。各々の舞踊を7分ほどに凝縮し、一日で四つの舞踊をすべて舞うという、非常に挑戦的な公演となっております。またこの度、「日本博サポーター」にも就任いたしました。これからも世界に向けて日本の伝統文化の良さを発信していきたいと思っております。

◆◆◆

 菊之助が光秀に初役で挑むほか、魅力的な出演者がスケールの大きな舞台を繰り広げます。分かりやすい解説付きで、初めて歌舞伎をご覧になるお客様から愛好家の方々まで、名作の醍醐味をお楽しみいただけます。この春一番の話題の舞台をどうぞお見逃しなく!

【関連トピックス】
休憩後「さくら割引」のご案内

舞台写真を公開しました!




3月歌舞伎公演『時今也桔梗旗揚』
3月歌舞伎公演は4日(木)初日、27日(土)まで!
※10日(水)・11日(木)・19日(金)は休演



チケット好評販売中!
国立劇場チケットセンターはこちら ≫