歌舞伎公演ニュース

2018年9月28日

中村梅玉、坂東彌十郎、市川右團次が
11月歌舞伎公演の成功祈願を行い、意気込みを語りました


豊川稲荷東京別院の大岡廟を参拝する中村梅玉

 八代将軍徳川吉宗の治世に江戸南町奉行を勤め、名奉行として評判の高かった大岡越前守忠相。庶民の人気を背景に、大岡が優れた裁定で様々な難事件を解決する物語「大岡政談」が創作され、颯爽とした名裁きを下す大岡越前守の姿が描かれました。
 将軍のご落胤を騙った一味が起こした実在の事件「天一坊事件」。その後「大岡政談」の一つとして脚色され、それを基に河竹黙阿弥が書き下ろしたのが『扇音々大岡政談(おうぎびょうしおおおかせいだん)』です。明治150年に当たる今年、11月歌舞伎公演は、明治8年(1875)に初演された本作の台本を新たに補綴し、『名高大岡越前裁(なもたかしおおおかさばき)』と題して、稀代の悪計を暴く大岡の苦心に重点を置いた場面構成で、通し狂言として上演します。
 上演に先駆け、中村梅玉、坂東彌十郎、市川右團次が、豊川稲荷東京別院を訪れ、大岡越前守の位牌を祀る御廟で公演の成功を祈願し、その後、意気込みを語りました。



大岡廟の前で
(左より)市川右團次、中村梅玉、坂東彌十郎

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中村梅玉
(大岡越前守忠相)

 大岡越前守は、江戸の町のヒーロー。映画・テレビで皆さんがよくご存じの名奉行ですが、この“天一坊事件”では、さすがの大岡も追い詰められてしまいます。大岡が「天一坊は将軍のご落胤ではない」と何度訴えても却下されてしまい、ようやく漕ぎつけた再吟味でも伊賀亮の弁舌に負けてしまいます。挙句の果てに切腹直前まで追い詰められますが、家来の働きで証拠を掴み、最後は大岡らしい裁きをする。大岡越前の人間的な膨らみが描かれた、とても面白い作品です。
 大岡越前の苦心が芝居の眼目です。大岡の心情をうまく表現したいですね。ただ、あまり心理劇のようになると歌舞伎らしさが失われてしまうため、その辺りが難しいところです。いかに歌舞伎というお芝居の中で大岡越前の苦心を見せるかを十分に研究して勤めます。最後は颯爽とした大岡越前にしたいですね。
 このお芝居の見せ場の一つが“網代問答(あじろもんどう)”です。大岡がいくら攻めても、伊賀亮がそれに理路整然と応えます。伊賀亮の彌十郎さん、天一坊の右團次さんという現代の歌舞伎界の精鋭たちを相手にするわけですから、そういう意味でも大変楽しみです。
 本日、大岡廟を参拝し、江戸のヒーローを演じるという覚悟ができました。みなさんのご期待に応えられるように、代々の先輩たちに負けないような大岡越前を創っていきます。

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坂東彌十郎
(山内伊賀亮)

 

 このお芝居には思い出がございます。国立劇場で昭和47年(1972)3月に上演された後、同じ年の6月に京都南座で上演された時、今回私が勤めさせていただく伊賀亮を、父の坂東好太郎が勤めました。父が歌舞伎に戻った頃で、「良い役を勤めさせていただけるんだ」と言っていたのをよく憶えています。奇しくもその時の父は61歳で、私は今62歳です。父の歳を越えてこの役を勤めさせていただくのは、とても光栄な事です。ちなみに、その時「ああ、しっかりした子役さんが出ているな」と思ったのが、忠右衛門を勤めていた今の右團次さんです(笑)。
 伊賀亮は元関白家にも仕えていたのですから、気品を持っていないといけません。さらには、頭の良さも持ち合わせ、問答では聴いているお客さまが引き込まれるようなリズムが必要です。伊賀亮が大岡越前をやり込める“網代問答”がこれから先も話題になるように、また再演されるように創っていかなければなりません。気持ちを引き締めて臨みます。
 印象に残っているのは、天一坊が伊賀亮に寄りかかって凄む場面です。私も師と仰ぐ猿翁さんの演じる天一坊が、父の伊賀亮とそうしたやり取りを見せていました。その場面がいかにも歌舞伎らしかったですね。そんな想い出も踏まえながら創っていこうと思います。

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市川右團次
(法沢後二天一坊)

 

 彌十郎さんのお話にもありましたが、私の初舞台が昭和47年6月京都南座でのこのお芝居でした。その折に十三代目片岡仁左衛門さんの大岡様と片岡秀太郎さんのお母様(大岡妻小沢)の間にちょこんと座り、忠右衛門で初めて舞台を踏ませていただきました。天一坊をお勤めになっていたのが師匠の三代目猿之助、現在の猿翁で、歌舞伎の道に進みましたのもこの時の師匠との出会いがあってのことと思っております。その師匠が勤め、代々の名優が演じてこられたこの天一坊を、諸先輩のお力を借りて懸命に勤める所存です。
 当時、師匠はまだ30代前半でした。この天一坊というお役は本当の悪人ではないけれど、何かのきっかけで悪事に手を染めていく、青年ゆえの浅はかさといったものを感じています。明治になってから黙阿弥が創った作品ですから、どこかに新しい風が吹いていた時代のお芝居です。伊賀亮も力を貸そうと思った天一坊という青年の“青さ”のようなものを出したいですね。
 また、皆様のご了解をいただきまして、私も勤めた忠右衛門を、倅の右近が勤めさせていただくことになりました。非常に縁を感じ、大変嬉しく思っております。

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 写真撮影には、市川右近も登場! 「お父さんには負けません!」と元気に挨拶しました。



(左より)市川右團次、市川右近、中村梅玉、坂東彌十郎

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 稀代の悪計に追い詰められる名奉行は、果たして真相解明にたどり着くことができるのか! 天下の〝大岡裁き〟にご期待ください。

11月歌舞伎公演は、3日(土・祝)から26日(月)まで
午前11時開演

チケットは10月6日(土) 午前10時予約開始!
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