歌舞伎公演ニュース

2022年9月20日

初代国立劇場さよなら公演

【10月歌舞伎公演】
『通し狂言 義経千本桜』

尾上菊之助が
意気込みを語りました!

 歌舞伎公演における〈初代国立劇場さよなら公演〉の幕開けを飾る10月公演は、義太夫狂言の三大名作のひとつ『義経千本桜』を3プログラムに分けた通し上演でお楽しみいただきます。
 無観客収録した動画配信でコロナ禍に話題を呼んだ、令和2年3月の“幻の公演”が、約2年半ぶりに実現。尾上菊五郎をはじめとする「さよなら公演」にふさわしい豪華な顔ぶれのなかで、尾上菊之助が知盛・権太・忠信の三役を勤め、芸術の秋に極上の舞台を繰り広げます! 念願の“三役完演”に挑む菊之助が意気込みを語りました。



〈初代国立劇場さよなら公演〉
歌舞伎第一弾は、
尾上菊之助が
満を持して挑む“三役完演”

◆◆◆



尾上菊之助
(佐藤忠信実ハ源九郎狐/渡海屋銀平実ハ新中納言知盛/いがみの権太/佐藤忠信)

 令和2年3月(国立劇場)の歌舞伎公演が中止になった時に、自分の中で、何か時計の針が止まったような気持ちになりました。来年の10月末には再整備のため国立劇場はいったん閉場しますが、ぜひこの初代の劇場で、時が止まってしまった公演を実現できないかと心に思い続けておりました。
 歌舞伎公演として「さよなら公演」の幕開けとなる10月の舞台で、A・B・Cの3プログラムに分けて、『義経千本桜』に挑みます。幼い頃から諸先輩方の舞台を拝見しながら、この三役を勤めたいと常に思っておりました。それが実現できる今、興奮の感情で胸がいっぱいです。

 渡海屋・大物浦(Aプロ)の知盛は、この国立劇場で岳父(二代目中村吉右衛門)から初めて大きな立役を教えてもらった役です。声の出し方、決まりの型への運び方など、すべての基本となることを学びました。岳父に捧げるつもりで勤めたいと思っております。
 権太(Bプロ)は、今年6月に博多座で父(尾上菊五郎)が勤めた折、その公演を毎日のように観て勉強しました。そこで学んだことを大切に、勤めたいと思っております。
 四の切(Cプロ)の狐忠信は、以前、父から狐の足の使い方や子狐に見えるような体の使い方などを細かく教えてもらいましたので、その教えを大切に狐忠信を勤めます。義経には父が出演いたします。
 前回(令和2年3月)、(無観客で映像収録した)配信で三役を勤めさせていただき、改めて役の大変さに加え、物語の素晴らしさを体感いたしました。Aプロ、Bプロ、Cプロには、それぞれに大事にしていきたいテーマがございます。

 Aプロは、〈愛〉です。安徳帝のような小さな子どもに対する愛は、自分も子どもを持ったからでしょうか、常に感じております。平家が滅んでいくという大きな流れの中でも、安徳帝を皆で大事に育て上げているということが1番のテーマではないでしょうか。典侍の局(すけのつぼね)が浪の下の都へ行こうと安徳帝を諭す場面は、いつ見ても心を打たれます。
 知盛は最期、義経に安徳帝を託し、平家一門の罪、平清盛が犯した罪をすべて背負って海底に沈んでいく。そして、体と罪は沈んでいくものの、魂だけは解脱していく。そこまで表現できればと思っております。

 Bプロは、〈義〉です。権太と弥左衛門の親子は、権太の素行が悪かったゆえに心を通わすことができずにいますが、父親の弥左衛門は権太の子どもがいじめられていないかと、いつも権太の家族のことを心配しています。権太も“いがみ”と呼ばれてはいますが、いつか親に孝行を尽くしたいという義を持って生きている人間です。ずっと改心する機会をうかがっていた時に、たまたま弥左衛門がかくまっている維盛に気付き、権太は決心したのだと思います。親子の言うに言われぬ情、人のことを思う義をBプロでは大事にしたいと思っております。

 Cプロは、〈忠〉です。狐忠信は、人間の姿に化けていますから、静御前が義経から授かった鼓をだまして持ち去ることもできたはずです。しかし狐は、義経に忠を尽くして静御前を守護し、鼓のそばにいます。忠義を立てたからこそ、義経は最後に鼓を狐に与えます。ごまかしのない忠義というものは、とても美しい関係だと思います。義経と静に対して一生懸命に忠節を尽くしていくという気持ちを大事に、狐を演じたいと思っております。

 よく世間で“勝ち組”という言葉が使われますが、『義経千本桜』は“勝ち組”のいない物語の中に、〈愛〉と〈忠〉と〈義〉が深く描かれています。登場人物たちは千本の桜のように美しく咲き、そして、散っていきます。通し狂言だからこそ、三役の様々な気持ちをより深く感じていただけますし、作者が残してくれた名作の素晴らしさを感じていただけると思っています。

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 菊之助が“三役完演”に挑む「さよなら公演」歌舞伎第一弾。A・B・Cのどのプログラムもみどころに溢れ、単独でもお楽しみいただけるとともに、すべてのプログラムをご観劇いただければ、通し狂言ならではの醍醐味もご堪能いただけます(お得な3セット割引もございます)。芸術の秋、多彩な登場人物が織りなす壮大なドラマをお見逃しなく!

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