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歌舞伎公演ニュース

2025年9月8日

【9月歌舞伎公演】

≪歌舞伎名作入門≫

『仮名手本忠臣蔵』
好評上演中、
27日(土)まで!

(舞台写真あり)

 9月歌舞伎公演が、初台・新国立劇場中劇場で幕を開けました。
 今回は義太夫狂言の三大名作の一つとされる『仮名手本忠臣蔵』より、屈指の名場面とされながら、上演機会の少ない「二段目」「九段目」をご覧いただきます。
 また、本公演は《歌舞伎名作入門》として、歌舞伎の名作を分かりやすいご案内付きで上演する公演です。初めて歌舞伎を観劇される方から愛好家の方まで名作の醍醐味をご堪能いただけます。

 公演の魅力を舞台写真とともに、ご紹介します。

◆◆◆

 今回は、ご案内役として「口上人形」が登場!
 「口上人形」は、通常『仮名手本忠臣蔵』の通し上演の始まりに登場しますが、本公演では特別に「二段目」「九段目」の上演前に、今回上演しない場面も含めた物語の背景や人物関係、注目ポイントをご案内します。
 なお、「口上人形」の声を担当するのは中村虎之介と中村玉太郎!
 二人の掛け合いにもご注目ください。


「口上人形によるご案内」
(声:中村虎之介・中村玉太郎)

◆◆◆

 続いて、『仮名手本忠臣蔵』の上演です。
 場面は桃井若狭之助の館。前日の鶴ヶ岡八幡宮での儀式で、饗応役を務める若狭之助とその指導役である高師直の間に諍いがあったので、桃井家では動揺が広がっています。主君である若狭之助の短慮を心配する家老の加古川本蔵(中村梅玉)は、妻の戸無瀬(中村扇雀)と娘の小浪(中村玉太郎)に、若狭之助の奥方を気遣うよう言い聞かせます。


二段目「桃井館力弥使者の場」
[左より]本蔵娘小浪(中村玉太郎)、
本蔵妻戸無瀬(中村扇雀)、
加古川本蔵(中村梅玉)

 そこへ、同じく饗応役を務める塩冶判官の使者として、塩冶家家老・大星由良之助の息子で、小浪の許婚の大星力弥(中村虎之介)がやって来ます。娘の心を察した戸無瀬は、力弥が伝える若狭之助への口上を、小浪に受けさせます。顔を合わせた二人は、互いに赤面し、物も言えない様子です。
 若狭之助(中村鴈治郎)から判官への礼をことづかり館を去る力弥を、小浪は名残惜しげに見送ります。


二段目「桃井館力弥使者の場」
[左より]本蔵娘小浪(中村玉太郎)、
桃井若狭之助(中村鴈治郎)、
大星力弥(中村虎之介)


二段目「桃井館力弥使者の場」
[左より]大星力弥(中村虎之介)、
本蔵娘小浪(中村玉太郎)

 その後、若狭之助は本蔵と二人だけで向き合い、師直から武士の名誉を傷つけられため、明日師直を討ち捨てる覚悟であると告げます。
 本蔵は若狭之助の決意を称賛し、若狭之助の刀を取って、庭先の松の一枝を切り、暗に師直への刃傷を勧めます。若狭之助は本蔵に別れを告げます。


二段目「桃井館松切りの場」
[左より]加古川本蔵(中村梅玉)、
桃井若狭之助(中村鴈治郎)

 しかし、若狭之助の決意を称賛した本蔵の本心は、全く異なるものでした。本蔵は、若狭之助の刃傷を未然に阻止し、桃井家を守るため、戸無瀬と小浪の制止を振り切って、師直のもとへ贈り物を携え急ぐのでした。


二段目「桃井館松切りの場」
[左より]加古川本蔵(中村梅玉)、
桃井若狭之助(中村鴈治郎)

◆◆◆

[この間のあらすじ]

 本蔵の根回しが功を奏し、師直と若狭之助の諍いは大事には至りませんでした。
 しかしその結果、師直による虐めの標的が塩冶判官に向かうこととなります。数々の屈辱に堪えきれなくなった判官は、殿中で師直に斬りかかり、刃傷事件を起こした罪により切腹を命じられます。
 逃げおおせた師直を討ち、主君の無念を晴らす決意をした由良之助は、敵方を油断させる策略として、主君の敵討ちのそぶりも見せず、国許を離れて遊興を続けているのでした。

◆◆◆

 雪景色のなか、由良之助が大きな雪玉を作らせながら、山科の閑居へ帰って来ます。


九段目「山科閑居の場」
大星由良之助(中村鴈治郎)ほか

 由良之助は、出迎えた妻のお石(市川門之助)に戯れかかり、寝入ってしまいます。
 お石から後を託された力弥が残ると、由良之助は起き上がり、先ほどの雪玉に込めた真意がわかるかと尋ねます。雪玉がすぐに溶けてしまうように、敵討ちも急ぐべきかと述べる力弥に対し、由良之助は、自分たちは日陰者であり、雪玉が日陰に置けばすぐに溶けないように、敵討ちも急ぐ必要はないと語ります。


九段目「山科閑居の場」
[左より]大星力弥(中村虎之介)、
大星由良之助(中村鴈治郎)

 そこへ、戸無瀬と小浪がはるばる訪ねて来て、出迎えたお石に対し、戸無瀬は力弥と小浪の祝言を願い出ます。


九段目「山科閑居の場」
[左より]本蔵娘小浪(中村玉太郎)、
本蔵妻戸無瀬(中村扇雀)、
由良之助妻お石(市川門之助)

 しかしお石は、今や浪人である大星家と、桃井家の家老である加古川家では釣り合わないと、戸無瀬の願いを断ります。なおも懇願する戸無瀬にお石は、師直に賄賂を贈ってへつらうような武士の娘を嫁にもらうことはできないと告げ、立ち去ります。
 戸無瀬は夫に合わせる顔がないと自害しようとしますが、小浪は自分こそ死ぬべきだと止めます。そして、力弥との祝言が叶わないことを嘆き悲しむ戸無瀬と小浪は、二人で死ぬことを決断します。


九段目「山科閑居の場」
[左より]本蔵娘小浪(中村玉太郎)、
本蔵妻戸無瀬(中村扇雀)

 折しも外からは、虚無僧の吹く尺八の音が聞こえてきます。
 鶴の親子の情愛を描く「鶴の巣籠」の音に気持ちが揺らぎながらも、戸無瀬が刀を振り上げたところに、再びお石が三方を手に現れ、力弥との祝言を許す代わりにこの三方へ本蔵の首を載せて差し出すようにと告げます。
 お石からの思いがけない要求に戸無瀬が返答に窮していると、外で様子をうかがっていた虚無僧が中に入ってきました。この虚無僧こそ、加古川本蔵だったのです。


九段目「山科閑居の場」
加古川本蔵(中村梅玉)

 本蔵は、由良之助親子がいつまでも主君の敵討ちを果たさないことを散々に罵倒し、この首は取れないと言い放ちます。
 それを聞いたお石が槍で突きかかるのを、本蔵は足で踏み押さえます。
 しかし、そこへ駆けつけた力弥に、本蔵は脇腹を貫かせるのでした。


九段目「山科閑居の場」
[手前左より]大星力弥(中村虎之介)、
加古川本蔵(中村梅玉)
[奥左より]本蔵娘小浪(中村玉太郎)、
本蔵妻戸無瀬(中村扇雀)、
由良之助妻お石(市川門之助)

 とどめを刺そうとする力弥を、奥から由良之助が制止し、わざと討たれた本蔵の心中を言いあてます。すると、本蔵は胸中に秘めた思いを語り始めます。
 死を目前にした本蔵の真意、そして本蔵の胸中を察した由良之助が明かす覚悟とは……。


九段目「山科閑居の場」
[左より]本蔵娘小浪(中村玉太郎)、
加古川本蔵(中村梅玉)、
本蔵妻戸無瀬(中村扇雀)、
大星力弥(中村虎之介)、
大星由良之助(中村鴈治郎)、
由良之助妻お石(市川門之助)

◆◆◆

 塩冶判官の刃傷事件によって翻弄される加古川家と大星家。武士としての忠義と、親子の情愛との間で葛藤する“二つの家族のドラマ”を、ぜひ生の舞台を通じてお楽しみください。
 歌舞伎を代表する古典『仮名手本忠臣蔵』をわかりやすいご案内付きでご覧いただける機会です!
 凝縮された劇場空間で織りなされる歌舞伎の傑作が、皆様のご来場をお待ちしております。

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♢中村梅玉、中村鴈治郎、中村扇雀が意気込みを語りました!



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