歌舞伎公演ニュース
2024年8月8日
9月歌舞伎公演『夏祭浪花鑑』
坂東彦三郎、坂東亀蔵、
片岡孝太郎が意気込みを語りました!
9月歌舞伎公演は、《歌舞伎名作入門》として、『夏祭浪花鑑』を、初台・新国立劇場中劇場で上演します。坂東彦三郎が団七九郎兵衛、坂東亀蔵が一寸徳兵衛、片岡孝太郎が徳兵衛女房お辰をそれぞれ初役で勤める熱気溢れる公演です。
本編前の「入門『夏祭浪花鑑』をたのしむ」では、片岡亀蔵がお芝居の魅力を分かりやすくご案内します。
公演に先駆け、彦三郎、亀蔵、孝太郎が意気込みを語りました。
また、同じく新国立劇場小劇場で『夏祭浪花鑑』を上演する9月文楽鑑賞教室に出演する、人形遣いの吉田勘彌、吉田玉助も大阪の国立文楽劇場からリモートで参加しました!


坂東彦三郎
(団七九郎兵衛)
この度、『夏祭浪花鑑』で、団七九郎兵衛を勤めます。玉島磯之丞で出演したことはありますが、あまり縁のないお芝居でしたので、最初にお話をいただいたとき、「団七はどなたですか?」と聞いてしまったほどです(笑)。
座頭も初めてのことですし、自分が団七を勤めるとは想像もしていませんでしたから、戸惑いが大きかったです。今回共演する片岡孝太郎さんや市川男女蔵さんに「君なら大丈夫」と認めていただいたことで自信になり、やってきたことが間違いではなかったと感じることができるようになりました。今まで経験し学んできたものを形にして、心の中、肉体の中にあるものを表現し、皆様の力を借りて、大役を勤めていければと考えています。
団七は松本幸四郎さんに教えていただきます。この狂言には江戸の型というものもあるので、そちらの方を活かして、とはいえ上方の匂いも残しながら、しっかりしたものを作っていきたいと考えています。
幸四郎さんから、団七を勤める上で大事なのは“引きずらないこと”と伺いました。例えば、徳兵衛がやっていることに対しても、いろいろ引きずらず、立廻りの後でもすぐに「わかった、では固めの杯をしよう」と割り切ることもそうです。キャラクターのイメージが点と点になったとしてもお客様には十分伝わるので、あまり引きずることのないようにと教えていただきました。
団七九郎兵衛は、白塗りで刺青をし、正義感にあふれた二枚目、絵に描いたようなヒーローのイメージがあります。ただ、それだけではなく、社会からはみ出てしまうようなドス黒さもあるのかもしれません。しかし、皆が団七のことを助けてくれるように、ただグレているわけでない明るさ、魅力のある人物、そうしたヒーローを演じられることはとても楽しみで、ワクワクしています。
この作品で感じられる上方の“油照り(あぶらでり)”、ジリジリとした天候や、殺しに行ってしまうあの景色とあの雰囲気というのは、江戸にはない場面だと思います。江戸の世話物では、ああいう“じとっ”としたものは、あまり思いつかないので、そこは今回うまく表現したいなと思っています。
いま国立劇場の公演は「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」です。ただつなぐだけではなく、‟新しく”つなげていかなければいけないと私も思います。客席内に特設花道を設けたり、オーケストラピットを使ってみたり、新国立劇場だからできる新しくフレッシュな舞台を作り上げていきたいと考えています。

坂東亀蔵
(一寸徳兵衛)
なかなかご縁のないお芝居ですが、実は40年前に私はこの「夏祭」で、団七の伜・市松として、初お目見得の舞台を踏んでいます。40年後に改めて出演するというのは、何かご縁を感じて嬉しい気持ちでいっぱいです。団七と徳兵衛を兄弟で勤めることは最近はあまりないので、面白いなと思っておりますし、新国立劇場に出演するのも初めてで楽しみです。孝太郎さん、片岡亀蔵さん、男女蔵さんもご出演されますので、ぜひ多くのお客様にお越しいただきたいと思っています。
一寸徳兵衛は、スッとしていてかっこいいというイメージがあります。私の中で徳兵衛としてビビッときたのは、4代目市川左團次さんの舞台です。出てきた瞬間に男らしく、ちょっと悪くて世間を斜めに見ているけれど、どこか可愛いげがある、新しい解釈をなさっている徳兵衛でした。
最初は敵対している団七と、義兄弟の契りを結んだ後は、ガラッと明るい徳兵衛になって…これは上方の芝居ですから違うのかもしれませんが、ちょっと尾上菊五郎劇団っぽいところも感じられますし、こういう風にやるのも素敵だなと思います。
この雰囲気でやりたいと男女蔵さんに相談したところ、「うちの親父(左團次)に聞いているから覚えていることを教えてあげるよ」と言われ、今回は男女蔵さんに教えていただくことになりました。伺ったことを舞台に出してしっかりと勤めたいと思います。
文楽と歌舞伎では違うところもあります。団七と徳兵衛の立廻りでは、文楽の方を見ますとお人形なので、人間ではできない素早く激しい動きがとても素晴らしいです。歌舞伎ですと、私たちは人間なので同じようにはできませんが、そこは歌舞伎の様式美として、一つ一つの決まりを大事にして、お客様に綺麗に見せるように心がけたいと思っております。

片岡孝太郎
(徳兵衛女房お辰)
私も(坂東)亀蔵さんと同じく、初舞台がこのお芝居でした。当時は17代目中村勘三郎のおじ様が団七とお辰を勤められ、三婦が祖父(13代目片岡仁左衛門)、徳兵衛で父(片岡仁左衛門)も出ておりました。そこからあっという間に50年以上経ってしまいました。お辰は初役でございます。亀蔵さんの女房ですが、一緒に出る場面がないので少し寂しい感じがします(笑)。
以前、片岡千壽が、お弟子さんたちの会でお辰を勤めた際に(平成28年8月上方歌舞伎会)、伯父(2代目片岡秀太郎)からみっちりと指導を受けておりましたので、その時の話を伺いながら、自分なりに上方の匂いが出せるお役を作っていきたいと思っております。
今回は小劇場で文楽さんが、同じく『夏祭浪花鑑』をなさっています。上方の文楽に、こちらは江戸の型で向かっていく、お互いに競って良いものを作りあげたいと思います。
私は今、伯父が使っていた台本のセリフをもとに、自分で書き出しています。言葉遣いなどのニュアンス的なところ、ちょっとした捨てゼリフとか、そういうところを大切に今回の舞台で使っていきたいなと思っています。
文楽さんの場合、太夫さんが語るので、捨てゼリフは無いですよね。反対に歌舞伎にはない動きがあるかもしれませんので、人形や人形遣いの方の動きも、どこか自分で取り入れられるところがあったらと思います。
今回は本当に“初”が多い公演です。初代国立劇場閉場後、文楽さんと一緒に企画して同じ狂言を上演するのも初めて。三人とも初役、先ほど彦三郎さんが、「初で初台」と(笑)、本当にそうだと思います。新しい人たちの新しい「夏祭」が、これからの定番になるかもしれません。特設の花道を使って皆様との距離が近くなったり、オーケストラピットを使って立廻りをしたり、いろいろ新しいことずくめで私たちも不安ですけれど、一生懸命勤めて次へつなげられる新しい歌舞伎を作っていきたいと思っております。
9月の新国立劇場では、歌舞伎と文楽で『夏祭浪花鑑』を上演します。今回特別に、9月文楽鑑賞教室に出演する文楽・人形遣いの吉田勘彌、吉田玉助も大阪からリモートで参加し、公演への思いを語りました。


吉田勘彌
(Cプロ:徳兵衛女房お辰)
Cプロでお辰を勤めさせていただきます。私は、一寸徳兵衛と同じ備中玉島(岡山県倉敷市)の出身です。故郷に縁のあるお芝居に出させていただくことはとても嬉しいですし、気分も上がります。
お客様には歌舞伎と文楽との演出や表現の違いというのをご覧になっていただければなと思います。また、私たちは鑑賞教室でAプロ、Bプロ、Cプロと3組で演じますので、演者による違いというのもご覧いただけたらと思っています。

吉田玉助
(Aプロ:団七九郎兵衛)
Aプロで団七を勤めさせていただきます。今、私たちがおります国立文楽劇場は高津宮にも近く、まさにご当地の演目です。
文楽では珍しく、立廻りは見得の連続で、形を綺麗に決めるのが難しく、歌舞伎と文楽がどのように違うのかを、ぜひお客様に見ていただきたいと思います。文楽は鑑賞教室ということで、若手の文楽技芸員が出演します。若手の力を結集して歌舞伎に立ち向かうという気持ちで今回頑張らせていただきます。
歌舞伎と文楽の垣根を越えて、孝太郎から勘彌への質問も飛び出しました。
孝太郎から、人形を遣ったお辰の色気の出し方にどんな秘訣があるか尋ねられた勘彌は、「どうなんでしょう、私も一番聞きたいところ(笑)。文楽で「夏祭」といえば、師匠の(吉田)簑助のお辰というくらいの当り役。大変な色気がありました。具体的にどうすれば色気が出せるのかというよりは、先ほど言われた油照りの蒸し暑い大阪の夏祭りの夕方に、ちょっと一瞬涼しい風が吹き抜ける、そういうイメージでお辰を遣えればなと思っています。」と話しました。
歌舞伎になじみの薄い方から、“本物”をたっぷり楽しみたい愛好家の方まで、名作の魅力をご案内付きで心ゆくまで味わっていただく《歌舞伎名作入門》。
今回は、上方の俠客の意気地を描く義太夫狂言の名作『夏祭浪花鑑』を上演します。彦三郎が初役で団七に挑むのをはじめ、坂東亀蔵の徳兵衛、男女蔵の三婦、片岡亀蔵の義平次、そして孝太郎のお辰ほか、溌剌とした顔ぶれによる熱気溢れる舞台にご期待ください。
また、同じく『夏祭浪花鑑』を上演する令和6年9月文楽鑑賞教室、社会人のための文楽鑑賞教室(いずれも一般券)との同時購入で各等級1割引となるお得な「夏祭セット割」もご用意!この機会にぜひ、歌舞伎も文楽もお楽しみください。
皆様のご来場をお待ちしております。
\チケットは、8月13日から発売開始/
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