皆様からの思い出

2023.09.12 更新

初代国立劇場と私

 私が初めて国立劇場に来場したのは昭和53年4月の「奥州安達原」、高校1年生でした。
 以前からテレビで見ていた歌舞伎に興味があり、前年の7月に友人のお母様に連れて行ってもらった歌舞伎座が劇場での初観劇でした。すっかり心を奪われてしまいましたが、高校受験の真っただ中の中学3年生で見に行くことが出来ません。母に受験が終わったら連れて行ってもらうことを約束し、念願かなっての観劇でした。チケットの買い方も分からず、母とプレイガイドで購入したことを覚えています。舞台は珍しい一つ家も出た安達原の通しだったのですが、何せ初心者なので、道行の菊五郎さんと(二代目澤村)藤十郎さんがきれいだったな、(五代目)勘九郎さんが女の格好をしていて実は男の人だった位しか記憶に残っていないのですが、これが歌舞伎沼への入り口でした。
 おこづかいの少ない高校生にとって国立劇場の3等席はありがたい限りでした。
 当時700円だったと記憶しています。歌舞伎座にはひいきの役者さんが出ているときしか行かれませんでしたが、国立劇場は歌舞伎公演がある月は必ず見に行くことが出来たので色々な役者さんを見ることが出来ました。
 また、広いロビー、フカフカの絨毯、大理石のトイレもとても特別な場所の様に感じていました。3等席でも花道が良く見え私にとっては青春時代をともに過ごした心の劇場です。
 結婚後子育て期間のご無沙汰をへて、観劇を再開して早10年。
 見始めたときに花形だった役者さんが大御所となり、息子さんたちが第一線で活躍されています。
 歌舞伎もずいぶん変わったなと思います。私が好きだった歌舞伎ではなくなってきている所が少し寂しい気もしますが、時代に合わせて変化しつつ発展していくのが歌舞伎なのでしょう。
 愛着ある建物が無くなるのは寂しい限りですが、より良い劇場となってまた通わせていただけることを楽しみに待っています。

(中里絵美様より)

国立劇場は未来へ向けて
新たな飛躍を目指します