皆様からの思い出

2023.08.14 更新

初代国立劇場と私

 建て替え前最後の鑑賞教室を堪能し、今このエッセイを書いている。パンフレットによると延べ六百八十万人超がこの鑑賞教室に来場したとのこと。二十五年前、私が初めて国立劇場に足を運んだのもこの鑑賞教室。学校行事で参加したため、鑑賞というよりは友人達とのおしゃべりに夢中で残念ながら演目の記憶が残っていない。それでも、劇場に集合した際に正面の車寄せから見た劇場の外観に圧倒されたことだけは鮮明に覚えている。建て替えとなることを知って以来、劇場に赴く度にこの景色を目に焼きつけている。この外観は、是非とも“未来へつないで”欲しいと願う。
 社会人になり、偶然目にした新聞広告がきっかけで文楽鑑賞教室の「仮名手本忠臣蔵」を鑑賞した。もともと忠臣蔵が大好きだった私だが、塩谷判官切腹の場面での人形を超越した動きに私の心は震えたのである。以降、私はあぜくら会に入会し、貪るように文楽公演に足を運ぶことになった。文楽の魅力は語り尽くせないが、私と文楽を出逢わせてくれたのは国立劇場なのである。文楽で観た演目が歌舞伎で上演されれば鑑賞し、また、その逆もしかりで、それぞれの魅力を充分に堪能させて頂いた。この十五年ほど、私の人生に確かな“彩り”を添えてくれた場所である。
 コロナ禍で暫く足が遠のいてしまったが、去年より観劇を再開。さよなら記念のカウントダウンのスタンプが遂に、一〇〇日台となりなんとも寂しい限りだが、「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」に期待し、再開場を待ちたいと思う。
 九月に鑑賞を予定している文楽公演が早く来て欲しいような、そうでないような…
 素敵な時間をありがとうございました。

(匿名のお客様より)

国立劇場は未来へ向けて
新たな飛躍を目指します