皆様からの思い出

2023.05.22 更新

初歌舞伎

 国立劇場の思い出…あれは私が15か16歳のころでしょうか?おそらく鑑賞教室だったと思いますが、義経千本桜“渡海屋・大物浦”を国立劇場で観たのが、“人生初”の歌舞伎でした。知盛を現在の松緑さんのお父様、辰之助さんが演じられていて、義経は現在の清元延寿太夫さんでした。もう昔過ぎて理由は忘れましたが、開演時間に遅れ汗だくとなり、劇場に着きまして、係の方に案内されて座った席は花道近くだったかと…辰之助さん演じる知盛が錨とともに海に身を投じる場面、いまだに私の脳裏に焼き付いています。初めて観る歌舞伎の舞台、キラキラしていて華やかで。初めて触れる歌舞伎の舞台は子供だった私の眼にはとにかく眩しく…私の歌舞伎初めが、国立劇場だったのです。その当時、劇場というものが、子供の私にはなんだか神聖な場所に思えたものでした。
 正直言うと若かりし頃は暫く歌舞伎から離れた時期もありました。でも昔から二代目中村吉右衛門さんのファンでしたので心の片隅にはずっとありました。
 コロナ禍で短縮版だったとはいえ、国立劇場で吉右衛門さんの俊寛を観られたこと、生涯忘れられない思い出になりました。
 私に歌舞伎の世界を教えてくれた国立劇場が建て替えになる…なんだか感慨深いものがあります。新しく生まれ変わる国立劇場に、また足を運ぶ日が待ち遠しく、楽しみです。

(富永朝美様より)

国立劇場は未来へ向けて
新たな飛躍を目指します