皆様からの思い出

2023.04.12 更新

縁は異なもの

 毎年秋に、国立演芸場で「五代目圓楽一門会」が開催されています。
 その中で五代目圓楽師匠の七回忌追善として、確か2015年「彼岸でかっぽれ」という一幕がありました。
 師匠亡き後、一門の若手が研鑽を積んで寄席の踊りを披露させて頂いたのです。
 五代目の小言(六代目の声色で)あり、亡者のかっぽれあり、という一幕でした。
 その後、毎年、踊りの一幕が添えられ、恒例となっていたのですが、コロナの影響等で2020年からご披露叶わなくなったまま、国立演芸場は建て替えという事になりました。
 実は、私は「五代目圓楽一門会」の囃子方の端くれです。
 話は平成3年4月に遡ります。自分が三味線の仕事をするなんて考えてもいなかった頃です。
 大劇場の歌舞伎公演で「かっぽれ」がありました。一観客だった私に大変な事が。
 先代團十郎丈、後の三津五郎の八十助丈といった御歴々が居並ぶ舞台に観客数人上げて踊らせる、という無茶ぶりです。
 客席に降りて犠牲者(笑)を物色する成田屋の大きな目から、我が目をそらす事が出来ず固まっていました。
 「只ではない、お土産付き」という言葉に、欲にまみれた私は、意を決して、ジーンズにTシャツ姿で舞台に乱入し、踊れもしない「かっぽれ」を踊り、見事記念品をゲットしたのでした。
 数十年後、その「かっぽれ」を、今度は演芸場で、五代目圓楽一門会の囃子方として勤めさせて頂いたのです。
 更に何年か後、新しい国立劇場・演芸場に何らかのご縁が繋がると愉しいな、と考えるこの頃です。

(鶴田弥生様より)

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