皆様からの思い出

2023.03.31 更新

初代国立劇場の思い出

 昭和四十一年十一月に、日本の伝統芸能の殿堂として誕生した国立劇場と同じ年の春、私は都内の短大に入学しました。
 国文科で学んでいたある時、授業を終えた先生が「あなた方日本文学を学ぶ学生は、この度出来た国立劇場にぜひ足を運んで、日本の伝統芸能を味わってほしい!特に地方から来た学生は、卒業したら又地元に帰ってしまい、生の公演を観る機会はほぼ無いと思う!学割の利く学生の内に一つでも多くを鑑賞してほしい!!」と熱く話されました。
 本当にその通りだ!!と思い、親からの仕送りの内から僅かなお小遣いを貯めて学割のチケットを求めて、初めて国立小劇場での「文楽」を鑑賞しました。
 何の予備知識もなく観た文楽の、人形の美しさも然ることながら、その時の若い太夫さんの語りの見事さに、すっかり魅了されてしまいました。その後、卒業するまでの間、もう一度文楽を楽しみましたが、地元に帰ってからは機会もなく、半世紀以上もの時が経ってしまいました。


 昨年秋、国立劇場が建て替えられる事を知り、若い頃のお金はないけれど、自由で充実していた学生時代を思い出し、建て替え前に是非もう一度文楽を観たいと思いました。そして昨年の九月、小劇場に足を運び、文楽を心ゆくまで堪能しました。本当に幸せな一日でした。


 六年後には、未来へつなぐ新・国立劇場が開場されるとの事。その時を心待ちにして、又、文楽を楽しみたいと思っています。

(本間眞記子様より)

国立劇場は未来へ向けて
新たな飛躍を目指します