皆様からの思い出

2022.11.21 更新

思い出の劇場

 僕は中学二年生です。でも、もう数えきれないほど国立劇場に足を運んでいます。歌舞伎が大好きな母に連れられて、小さい時から毎年夏休みに『親子で楽しむ歌舞伎教室』を観に来ていたのです。あの頃、話の内容は良く分からなかったけれど、広くて大きな劇場、ロビーの天井にある大きなタンポポの綿毛のようなシャンデリア、そして派手な演出に圧倒されました。

 実は僕自身も二度、国立劇場の舞台に立ったことがあります。一度目は日本舞踊協会「おどりの寺子屋」プロジェクト。2度目は東京都の「キッズ伝統芸能体験 小鼓コース」です。どちらも一年くらい皆でお稽古し、国立劇場で発表するというものでした。まだ小学生だった僕ですが、客席から見ていた景色と、こうやって舞台から見える景色は全然違うんだなあと不思議な気持ちになったのをよく覚えています。

 中学生になって僕の学校には「三味線部」があることを知り、少し迷いましたがすぐ入部を決めました。なぜ迷ったかというと、入部希望者が僕しかいなかったからです。僕は慌てて友達に声をかけ、男子三人で入部することになりました。「三味線部」という名前ですが、実はお箏もやります。そして、なんという巡り合わせか、そのお箏の先生がこのラストイヤーに国立劇場で演奏会に出演するらしく、どうやら僕たちも出演できるかもしれないという話があったのです。僕の胸は高鳴りました。たくさん思い出のある大好きな劇場に友達と一緒に出演できるなんて、奇跡です。

 もちろんまだまだ歌舞伎も文楽も観に来る予定です。国立劇場を端から端まで探検して、もっとたくさんの思い出と写真を残そうと思っています。そして最後の日には、前に文楽で観た野崎村の「さらばさらば」の詞を口ずさみながら、また会う事を約束しに来たいと思います。

(橋本公慈様より)

国立劇場は未来へ向けて
新たな飛躍を目指します