日本芸術文化振興会トップページ > 国立演芸場 > 演芸資料展 見世物の「近代」—開国から明治の時代
国立劇場調査養成部調査資料課
開国から明治の時代の日本へは、海外からの人、モノ、技術、文化が大波となって押し寄せた。それ以前の「鎖国」下にあっても、中国またオランダとの長崎貿易などを通じた海外文物が限定的に入っていたが、開国以降のとくに横浜へは、欧米各国からの製品、世界各地の産品、西洋文物が堰を切ったように大量に流れ込み、日本の「西洋化」「西洋的近代化」が急速に進められていく。
庶民娯楽である見世物の世界も、同じ流れのなかに置かれた。開国により、外交使節だけでなく民間人が来日できるようになったことは重要であり、早くも元治元年(1864)の横浜居留地ではアメリカ人興行師が曲馬興行をおこなっている。開国はまた珍しい異国の動物を次々ともたらし、舶来動物の見世物が興行界をにぎわす。明治期に各国からやってきた西洋曲馬・サーカスは見世物の新しい華となり、その影響を受けながら日本のサーカスが生まれていく。ほかにも新奇な欧米の見世物が続々と来日して注目をあび、ときにそれは歌舞伎の題材ともなった。
一方、日本で慶応2年(1866)から一般人の海外渡航が可能になると、最初に旅券(旅券番号1〜18)を取得して横浜から出航したのはじつは曲芸師の一団であり、その後も多数の日本人曲芸師と見世物関係者が海を越え、主として欧米で活躍した。のちには、海外体験を経た「洋行帰り」の者たちが明治の興行界で活躍する。
こうして見世物もまた、海外との相互交流のなかで「西洋化」の荒波の時代を生き、その姿を変容させていった。見世物の「近代」を見つめることで、私たちが拠って立つ過去の時代と文化を少しでも知っていただければ幸いである。
展示監修:川添裕(横浜国立大学教授)
会期 | 令和2年12月1日(火) ~ 令和3年3月21日(日) |
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開室時間 | 午前10時から午後5時 |
休室日※ |
12月21・22・24~31日 1月1・8~10・21~31日 2月22・24・25・28日 |
場所 | 国立演芸場1階・演芸資料展示室 |
入場制限 | 8名以内 ※展示室内の混雑緩和のため |
入場料 | 無料 |
主な展示資料のご紹介です。展示資料一覧(PDF)のダウンロードはこちらから。
錦絵 浅草奥山生人形 安政2年 江戸・浅草奥山
錦絵 リズリーサーカス 元治元年 横浜居留地
絵番付 オランウータン 明治5年 京都・蛸薬師境内
錦絵 異国渡り大象の図 文久3年 江戸・西両国広小路
錦絵 チヤリネ大曲馬御遊覧の図 明治19年 東京・吹上御苑
錦絵 上野公園風船之図 ボールドウイン氏 スペンサー氏 明治23年 東京・上野公園
絵番付 PANORAMA パノラマ 明治28年 東京・浅草日本パノラマ館
錦絵 世界無比不可思儀奇術 米国ウヲッシ、ノアトン社中 明治21年 東京・千歳座
寄席ビラ 開花早学文 耶蘇教講議 帰天斎正一 明治初期 東京・浅草石浜亭カ
絵番付 古今無双 東洋奇術一大改良 ジヤグラー操一社中 明治21年 東京・浅草文楽座
絵番付 世界無比大奇術 松旭斎天一師 天二師 天勝嬢 明治44年 東京・明治座
所在地 | 〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1 | |
TEL | 03-3265-7411 | |
最寄り駅 | [地下鉄] | 半蔵門線 「半蔵門駅」 1・6番出口より徒歩8分 有楽町線・半蔵門線・南北線 「永田町駅」 4番出口より徒歩5分 |