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国立能楽堂

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【千駄ヶ谷だより】 太鼓をめぐる殺人事件

国立能楽堂6月19日(金)定例公演は、能「富士太鼓(ふじだいこ)」を上演します。夜6時30分の開演です。

あらすじ


天王寺の楽人で太鼓の名手である浅間(あさま)は、宮中で行われる七日間の管絃の役を仰せ付けられました。
同じく住吉神社の楽人でこちらも負けず劣らぬ太鼓の名手である富士(ふじ)は、自分が宮中の管絃に出たいと望み、都へ上ります。しかし、浅間は富士が自分に対抗しようと都までやって来た振舞いを憎んで、富士の泊まっている宿へ押しかけて富士を殺してしまいました。

富士の妻は、月夜に雨が降るという不吉な夢を見て不安になり、夫を探しに娘と都へやって来ます。
そこで富士が殺されたことを聞き、妻子は嘆き悲しみます。
富士の舞装束を渡され、残酷な事実に妻は狂乱し、悲しみのあまり太鼓を「敵(かたき)」と言い出します。そして富士の舞装束に身をつつみ、太鼓をこれでもかと、泣きながら打ち鳴らすのでした。

〝富士の山の裾野の桜が、富士颪にもまれて四方へばっと散るような、そういう美しい舞楽、美しい楽人の舞に、太鼓の役を勤める夫は世間の評判どおり立派なものであった〟と妻は夫を思い出し、五常楽、千秋楽、太平楽、羅陵王…と舞楽の曲を打ちます。
そしてとうとう妻は〝敵は討った、もう泣くことはない〟と言って正気に戻ると、この太鼓が夫の何よりの形見であったと見つめて、自分の里へ帰って行くのでした。


「能之図」より 能「富士太鼓」(国立能楽堂所蔵)
 

富士と浅間


曲中、富士と浅間とどちらを選ぶかについて、萩原の院(花園天皇)は、「信濃なる浅間の山も燃ゆなれば富士の煙のかひやなからん」という『後撰集』の歌を例にあげており、楽人の名はここから暗示されたと思われます。
どちらも活火山であり、作品の浅間と富士の激しやすい性格を暗に表していると言えます。
またこの歌から、浅間山のほうが富士山より激しく噴火していたと考えられ、殺人事件との関係がうかがえます。

先ほどの歌を引用して、天皇は〝富士という名は天下一でも、実際は浅間の方が勝っていよう〟と意見し、それを聞いて誰も富士のことを言わなくなります。
太鼓の役は当初の予定どおり浅間になるはずでしたが、浅間はそれでも富士を殺したのでした。
 

富士太鼓と梅枝


能「富士太鼓」の後日譚に、能「梅枝(うめがえ)」があります。
住吉で粗末な庵に泊まった僧が、庵に似合わない見事な太鼓と舞装束を見つけ由来を問うと、女主人は浅間と富士の事件を語り、富士の妻が亡くなったので回向してほしいと頼んで消えます。
後場で舞装束を身につけた富士の妻が現れ、夜半楽と越天楽の唱歌「梅が枝」を歌いつつ舞を舞い、想夫恋の楽の鼓を打ち、やっと夫への執着をぬぐって成仏するという話です。

「富士太鼓」で狂乱して太鼓を打ち鳴らし、感情を昇華させて、悲しみが和らいだかに見えた富士の妻。
しかし人の心は単純にはゆかず、恋しい人、近しい人を失った悲しみは心の奥底に残って死してなお消えません。とあるひとつの事件を題材に、深い悲しみと心に向き合った二つの作品です。 

 

 日時

  6月19日(金) 午後6時30分開演 (終演予定8時45分)

 演目・出演者

 狂言「入間川」野村萬(和泉流)
 能「富士太鼓」粟谷能夫(喜多流)

 料金  正 面=4,900円
 脇正面=3,200円(学生2,200円)
 中正面=2,700円(学生1,900円)

 チケット予約

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 [電話] 国立劇場チケットセンター(10時~18時)
  0570-07-9900 / 03-3230-3000(一部IP電話等)
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