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国立能楽堂

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【千駄ヶ谷だより】 月間特集・江戸時代と能

国立能楽堂では、7月の4公演を「月間特集・江戸時代と能」と題し、特集上演します。

江戸時代の能




7月のチラシにも登場している上の錦絵は、「町人御能拝見之図」(国立能楽堂所蔵)。

江戸時代の観能の一風景を描いたものです。
奥にはずらりと並んだ大名が「翁」を鑑賞しています。
手前には、傘を持ってなにやら騒いでいる町人たちの姿…。

江戸時代、能は「式楽(しきがく)」として幕藩体制に組み込まれ、公式な行事の際に上演されるとともに、将軍や大名たち自身のたしなみとなりました。
そのため町人たちが能を観る機会は限られ、ごく稀に許されたのは、幕府の許しを得て各座が催し、収入を得る「勧進能(かんじんのう)」、江戸城内で一部の町人を招いて行われる「町入能(まちいりのう)」でした。

観能の機会は少なかったのですが、謡本の刊行で町人のあいだには謡が流行し、能の詞章は寺子屋の教材にも用いられたようです。錦絵のように客席が大賑わいなのは、心待ちにした観能だったからなのでしょう。
ちなみに錦絵の町人たちが手にしている傘は町入能の際、雨にそなえて一本ずつ配られたもので、雨が降っているわけではありません。退出の際にはお菓子や酒も配られ、至れり尽くせりのおもてなしだったようです。
 

明和改正謡本と観世元章


江戸時代の謡本刊行で注目すべきは、十五代観世大夫・観世元章(かんぜもとあきら)の、「明和改正謡本(めいわかいせいうたいぼん)」です。

観世流の曲について、詞章を大幅に改め、型、扮装、節付、作リ物、小書(こがき)、演出の改革を行うなど大胆な内容でした。
しかし行き過ぎた改訂が波紋を呼び、約10年間使用されて元章没後に廃止されますが、演出の改革による工夫は多く残り、以後の観世流の曲目、詞章、発音などに影響を及ぼすこととなりました。
1765年に刊行され、本年は刊行から250年にあたります。

観世元章(1722-1774)は、十四世観世織部清親の長男。徳川九代将軍家重、十代家治などの能指南役を勤め、旺盛な政治力で観世流を隆盛に導きました。
今回、企画公演では「明和改正謡本」刊行の際に元章が作った能「梅」を現観世流宗家・観世清和氏のシテで上演します。同時上演の狂言「鬼ケ宿」は幕末の大老・井伊直弼の作です。また能「藤」は、観世流では元章の改作が現行曲として残っており、改訂以前の宝生流と比較して仕舞でご覧いただきます。

そのほかの3公演について、狂言「月見座頭」「簸屑」「佐渡狐」は、いずれも江戸時代に作られたと考えられる作品です。
定例公演の、能・古本による「水無月祓」では、江戸初期の謡本にあった男女の別れの場面を復活、主人公の女物狂の心の変遷がより鮮明に描かれます。能「自然居士」は、江戸時代に興った喜多流の流祖・北七大夫長能(きたしちだゆうおさよし)の得意曲のひとつ。普及公演の、能「大瓶猩々」は、稀曲を好んだ五代将軍徳川綱吉の周辺で復曲されたといわれる曲です。

成立した歴史から中世芸能というイメージが強い能楽ですが、江戸時代は能楽の外郭が整えられるなど大切な期間でした。現在の能に至る歴史に思いを馳せつつ、お楽しみください。


<月間特集・江戸時代と能> ※6月9日(火)10時より発売開始
7月3日(金) 定例公演  狂言「月見座頭」大藏彌太郎(大蔵流)/能・古本による「水無月祓」観世銕之丞
7月11日(土) 普及公演  解説/狂言「簸屑」三宅右近(和泉流)/能「大瓶猩々」井上裕久(観世流)
7月23日(木) 企画公演  仕舞「藤 クセ」髙橋章(宝生流)・木月孚行(観世流)/狂言「鬼ケ宿」茂山あきら(大蔵流)/能「梅 彩色之伝」観世清和(観世流)
7月29日(水) 定例公演  狂言「佐渡狐」石田幸雄(和泉流)/能「自然居士」香川靖嗣(喜多流)


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