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【千駄ヶ谷だより】菊慈童…七百歳の美少年〈近代絵画と能〉

能は古典文学に取材した作品も多く、人の心の内面を深く描いた重層的な構成、魅力的な舞台、洗練された面(おもて)、豪華絢爛な装束などで芸術家を大いに刺激して来ました。日本の近代絵画の分野でも、能を題材として描かれた絵画作品が数多くあります。

2月の国立能楽堂では、《月間特集・近代絵画と能》と題し、近代絵画に描かれた能の演目を上演。絵画による曲のイメージの広がりと共に、作品の魅力を改めて味わっていただく企画公演です。今回とりあげる曲目は、
・「菊慈童」(菱田春草画)
・「弱法師」(下村観山画)
・「砧」(上村松園画)
・「楊貴妃」(小林古径画) の4作品です。

2月3日(水)の企画公演では〈復曲再演の会〉として、能「菊慈童(きくじどう)・酈縣山(てっけんざん)」を上演します。
平成16年梅若会で復曲された小書(こがき=特殊演出)「酈縣山」により、美少年・慈童が帝の枕を踏み越えた罪により山へ流罪となる、物語の始まりの場面が復活。通常の能「菊慈童(枕慈童)」では省略されている場面で、国立能楽堂では初めての上演です。

また、同時上演の狂言「若菜」は、大名の早春の野遊びを題材にした曲で、謡や舞など中世ののびやかな世界が舞台に繰り広げられます。和泉流にのみ残る作品でしたが、国立能楽堂で昭和62年に大蔵流で復曲。その後平成2年に再演して以来、国立能楽堂主催公演では26年振りの上演となります。

能「菊慈童」の物語


周(しゅう)の穆王(ぼくおう)に仕えていた慈童は、誤って帝の枕をまたいでしまい、流罪となって酈縣山に送られます。酈縣山は山深く、流罪は死を意味します。戻れなくするため山への橋を護送の官人が壊し、慈童はひとり打ち捨てられ泣き伏します。手に持っているのは、罪の原因となった帝の形見の枕でした。

時代は変わって、魏の文帝の頃。酈縣山の麓から薬の水が湧き出たので、その水上を見て参れという文帝の宣旨により、臣下は山へやって来ます。季節は秋、紅葉の美しい道を通り山奥深く行くと庵があり、現れたのは周の穆王に召し使われていた美しい少年の姿のままの慈童。慈童は穆王の寵愛を失ったことを嘆きますが、すでに数代の帝が代替わりしていました。七百年の間生きている慈童に臣下は驚きます。慈童は、枕に書き添えられた穆王の経文の功徳で、菊の葉の露が不老不死の薬となったことを語り、帝の経文の功徳をたたえ舞を舞うと、姿を隠すのでした。

 

菱田春草の〈菊慈童〉


菱田春草(1874~1911)は、横山大観、下村観山とともに、岡倉天心の創設した日本美術院に参加、日本画の発展に励みます。明治期、鎖国を終えた日本は西洋の文化が流入、絵画においても画面を〝面(塗り)〟で構成する西洋画と出会い、日本画の伝統であった線描技法が揺さぶられます。新しい日本画とは何かを模索した当時の日本画家たちは、線描をやめ、面での描画を試みますが、新たな境地は評価されず、濁った塗りの色彩による「朦朧体」であると揶揄され批判を受けました。その「朦朧体」で描かれた作品のひとつが春草の〈菊慈童〉です。後年、春草は〈落葉〉を描き日本画で遠近の空間表現を実現するなど、斬新な技法で近代日本画の発展に貢献しましたが、病のため36歳の若さでこの世を去りました。

春草の出生地・長野県飯田市にある飯田市美術博物館所蔵の〈菊慈童〉は、見る者に不思議な感動を与えます。深山幽谷の湖の岸辺にたったひとり菊の花を持って立つ、小さな小さな慈童。小書「酈縣山」で語られる山に打ち捨てられた悲しみと七百年の寂寞の思いを抱えて、この世のものでない存在となった彼の姿は、複雑な色合いの風景に混じり、永遠の物語として描き留められています。


菱田春草「菊慈童」 飯田市美術博物館蔵 絹本着色 明治33年

※絵画作品の展示はございません。図版を掲載した公演プログラム(580円)を販売します。

 

 日時

  2月3日(水) 午後1時開演 (終演予定3時30分頃)

 演目・出演者

 狂言「若菜」山本泰太郎
 能「菊慈童」梅若紀彰

 料金  正 面=6,300円
 脇正面=4,800円(学生3,400円)
 中正面=3,200円(学生2,200円)

 チケット予約

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 [電話] 国立劇場チケットセンター(10時~18時)
  0570-07-9900 / 03-3230-3000(一部IP電話等)
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