トピックス
【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂令和7年3月主催公演がまもなく発売です!
狂言 口真似
ひとりで飲むのもつまらないからと、主人は太郎冠者に酒の相手を探してくるよう言いつけます。ところが太郎冠者が連れてきたのは、酒乱で有名な男! 主人は困惑しますが、ここは穏便におひきとり願うことにします。そこで、気の利かない太郎冠者が出しゃばって事を荒立てないように、とにかく自分と同じようにふるまえと命じたのですが…。
能 三山
大和国を訪れた融通念仏(ゆずうねんぶつ)の良忍上人(りょうにんしょうにん)は、この地では「天の香久山(かぐやま)」「畝傍山(うねびやま)」「耳成山(みみなしやま)」を総称して「三山」と言うことを土地の男から聞きます。そこにひとりの女が現れて、『万葉集』には、三山は天の香久山が男、畝傍山と耳成山は女に喩えられていると言い、昔語りをはじめます。かつて、香久山の麓に住む男に寵愛されていた畝傍山の桜子(さくらご)、耳成山の桂子(かつらご)という二人の女がいて、男の気持ちが桜子に向いてしまったのを嘆いた桂子は耳成の池に身を投げ空しくなったのでした。語り終えた女は上人に念仏による仏との結縁を願い、桂子であることを明かして、姿を消しました。
夜になって上人が池のほとりで回向していると、桜子の亡霊が姿を現して、我が身にたたる桂子の恨みを解いて欲しいと頼みます。そこに桂子の亡霊も現れ、二人は本音をぶつけ合い、争いを繰り広げます。やがて夜明けとともに因果の報いを晴らした二人の亡霊は、里の景色のなかに消えていくのでした。
狂言 八句連歌
知り合いの男に米代を貸した亭主は、何度催促をしても返してくれない男に業を煮やし、自ら取り立てに向かいます。またしても居留守を使って逃げようとする男を待ち伏せ、亭主は男を家に連れて帰りました。返済を迫られた男は、家のあれこれを褒めはじめます。そして、かなぼうし(子ども)が書いた文字を褒めたところで、亭主は男が連歌を嗜むことを思い出し、ともに連歌をはじめたのですが…。
能 恋重荷
白河の院に仕える庭掃きの老人が、偶然垣間見た女御(にょうご)に心を奪われ、恋い焦がれます。それを知った臣下は老人を呼び出して「この重荷を持って庭をひと回りすれば、女御が姿をお見せになる」と言います。喜んだ老人は女御の姿見たさに勇んで挑みますが、重荷はびくとも動きません。身分違いの老いらくの恋を嗤われた老人は、嘆きの果てに悶死してしまいます。
老人の死を知った女御は深く憐みますが、恨みで鬼と化した老人の亡霊が現れて、女御を激しく責め立てます。しかし、老人の亡霊はやがて恨みの心を和らげ、女御の守護神となることを誓って消えて行くのでした。
狂言 名取川
比叡山で受戒し(仏法に帰依する者としての規範を授かること)、希代坊(きたいぼう)、不祥坊(ふしょうぼう)というふたつの僧名をもらった男。物覚えが悪いので袖に書いてもらい、さまざまな謡い物にふたつの名を織り込んで口ずさみながら帰国の途につきます。途中、大きな川を渡る際に深みにはまり、岸にあがって失くし物はないか点検すると、なんと、大切な名前が流れてしまっています! あわてて笠で名前をすくおうと川に入った男の前に「名取の某」と名乗る人が現れて…。
能 景清
かつて悪七兵衛(あくしちびょうえ)の異名をとった平家の猛者(もさ)・景清は、源平の戦いに敗れた後、源氏が栄える世の中など見たくはないと、自ら両の眼をえぐって盲目となりました。日向国に流された父を探し、娘の人丸がはるばる鎌倉からやってきます。乞食のような今の自身の境涯を恥じた景清は、一度は他人のふりをしますが、里人のはからいで親子の対面を果たしました。娘に乞われ、景清は、屋島の合戦での敵将・三保谷四郎との戦いの様を語って聞かせます。語り終えると、景清は娘に帰郷をうながし、見えない目でその後ろ姿をいつまでも見送るのでした。
「天正狂言本」と古画による狂言 袴裂
結婚後に夫が妻の実家を初めて訪れる「聟入り」のため、聟が舅の家にやってきます。ところがその訪問が予定より1日早かったので、舅の家はてんやわんや。新調した裃(かみしも)もまだ届いていません。仕方なく舅は太郎冠者の袴を借りて対面に臨みました。そうとは知らない聟が「太郎冠者に頼みごとがある」というので、舅は物陰で袴を脱いで太郎冠者に渡し…。一枚しかない袴で、舅と太郎冠者は、どう切り抜けるのでしょうか?
現存する最古の狂言台本「天正狂言本」だけに伝わる曲で、現行狂言「二人袴」の古形と考えられます。古い狂言絵の演出を取り入れて令和2年に国立能楽堂で上演された作品の再演です。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
復曲能[新演出] 武文
元弘元年(1331)、後醍醐帝は鎌倉幕府打倒を目ざして挙兵するも敗北、帝の一宮(いちのみや・第一皇子)尊良親王は土佐の幡多(はた)に流されます。その後、京に残された一宮の御息所(みやすどころ・妃)が秦武文(はだのたけぶん)を警護に伴い夫をたずね危険な旅に出る──というのは史実ではなく『太平記』の語るところですが、この物語を能にしたのが『武文』です。両人が尼崎大物(だいもつ)の浦に至り船宿で追風(おいて)を待っていると、この浦に居合わせた筑紫の国松浦(まつら)氏の武士がこれを覗き見て、御息所に一目惚れします。松浦は彼女を掠奪すべく浦の舵取や船宿の主と策略をめぐらせ、火事と夜盗の騒ぎを仕組みます。その混乱のなか武文は迂闊にも御息所を松浦の船に預け、逃亡されてしまいます。気付いた武文は必死で追うも追いつけず、敵から嘲りを受け、屈辱のあまり腹を掻き切って海中に身を投げます。その知らせに浮かれて船を進める松浦たちですが、武文は怨霊となって海中から迫り、恐ろしい姿を現して松浦を海中に引きずり込むのでした。
【文/横山太郎(立教大学教授)】
●関連トピックス
●令和7年3月主催公演発売日
- ・ 電話インターネット予約:令和7年2月10日(月)午前10時~
- ・ 窓口営業日:令和7年2月15日、19日、22日、28日、
3月5日、8日、19日、25日、28日、29日
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