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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂1月主催公演がまもなく発売です!

 

三人夫

 淡路国、尾張国、美濃国の百姓が、都の領主に年貢を納めに行く途中で道連れとなり、揃って領主の館に到着します。奏者(そうしゃ・取次の役人)を通して三人が無事に年貢を納めると、ちょうど宴会が開かれているところでした。座興(ざきょう)にそれぞれの国の名を入れた歌を詠めと命じられた三人は、「淡路より種蒔き初めて三つ葉さす、花咲きおわり、みのなるは稲」と合作の歌を詠じます。その歌がとても見事だったので、三人は名を問われ、今度はそれぞれの名を詠みこんだ歌を所望されて…。

春日龍神

 仏跡を訪ねて唐(中国)から天竺(インド)に渡ることを志した明恵上人(みょうえしょうにん)は、暇乞いのため春日の明神(春日大社)に参詣します。そこで出会った宮守の老人は、上人が唐・天竺へ向かおうとしていることを知ると、「それは神慮(しんりょ)に背くことだ」と言って引き止めます。釈迦入滅から長い時が経った今となっては、唐や天竺に行くことのご利益も薄れ、この春日山こそ釈迦が説法を行なった聖地・霊鷲山(りょうじゅせん)と見なされ、唐や天竺の霊地はすべてこの日本に移し置かれているのだから、わざわざ他国に行くことはないと言うのです。老人の言葉を、上人は神託と受け止めます。すると老人は、もし思いとどまるならば、三笠山に天竺を移して釈迦の一生を見せようと告げ、自らが春日明神の使者・時風秀行(ときふうひでゆき)だと明かして、姿を消してしまいました。
 やがてあたり一面が金色に輝く世界となり、龍女が現れて舞を舞います。さらに威風堂々たる姿の龍神が出現して、三笠山に釈迦の一生を映じてみせます。霊験あらたかなその光景を目にして、上人はこの地にとどまることを決意するのでした。
 辰年の新年最初の能として、龍にちなんだ祝言能をお届けします。龍女之舞の小書(特殊演出)により、通常では登場のない龍女が出て舞を舞い、龍神は白頭(しろがしら)となって荘厳さが増します。町積は、日本から唐・天竺への道がいかに遠く困難かをじっくりと語る狂言方の珍しい小書です。

鞍馬参り

 正月、今日は初寅の日。鞍馬参りを思い立った主人は、太郎冠者を連れて鞍馬寺へと向かいます。御堂にこもって一夜を明かすと、太郎冠者は夢のなかで多聞天から福を授かりました。帰りの道々、太郎冠者からその話を聞いた主人は、自分は授からなかった「福」がうらやましくて仕方ありません。そこで、太郎冠者から福を取りあげようとするのですが…。

二人静

 正月七日、吉野山では勝手神社に若菜を供える神事が行なわれます。神官から命じられた菜摘女が野辺で若菜を採っていると、ひとりの女が現れ、自分の供養を神官に頼んでほしいと言います。そして「不審に思う人がいれば、あなたに乗り移って名を明かしましょう」と言い、姿を消してしまいました。
 菜摘女が神社にもどって神官に事の次第を話していると、突如、先ほどの女が憑依して、自らが静御前の霊であることをほのめかします。神官が「静御前は舞の名手。まことの静の霊ならば舞を舞ってごらんなさい」と促すと、静御前の霊を憑依させた菜摘女は、宝蔵(ほうぞう)に残されていた静の舞装束を身につけ、舞いはじめます。すると、静御前の霊も同じ装束に身を包み、菜摘女に寄り添うように舞って、弔いを願うのでした。

 能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの公演です。公演当日の開演前には能舞台で能楽師による簡単なプレトーク(解説)があります。また、公演の一週間前には、チケットご購入の方が無料で参加いただけるワークショップも開催します。

※ プレトークは午後6時30分開始です。

 

梟山伏

 山からもどってきた弟の様子がおかしいので、兄は山伏に治療を頼みます。祈祷をはじめると弟は「ホホン!」と不思議な声をあげて、どうやら梟が取り憑いているようです。山伏がさらに懸命に祈ると、今度は梟が兄にも取り憑いて…。

 信濃国・木曽の山里の僧が都見物の旅に出ます。道すがら、鳰(にお)の海(琵琶湖)のほとりで粟津ヶ原にさしかかると、松蔭に祀られた祠の前で祈り、涙する女と出会います。言葉を交わすうちに、僧が木曽の山里の出であることがわかると、女は、ここが木曽義仲ゆかりの地だと語ります。実は、女は木曽義仲の愛妾で、最期の戦に同行しともに戦った女武者・巴御前の亡霊だったのです。
やがて本性の姿で僧の前に現れた巴御前の亡霊は、戦いの奮闘ぶりを再現してみせます。そして、女性であるがゆえに義仲と最期をともにすることがかなわず、自分だけが生き延びた無念を語るのでした。
 修羅道に堕ちた武将の霊を描く修羅物の中で唯一、女性を主人公とした作品です。

 

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

●1月主催公演発売日
  • ・ 電話インターネット予約:12月10日(日)午前10時~
  • ・ 窓口販売:12月11日(月)午前10時~
  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/