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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂12月主催公演がまもなく発売です!

 

鳴子遣子

 二人の男が連れ立って鞍馬の縁日へと向かっていると、途中で、鳥を追い払うために田んぼに張り巡らされた仕掛けが目に留まりました。これを「鳴子」と言うか、「遺子」と言うか。意見が食い違った二人は、判定を茶屋の亭主に頼むことにします。ところが、男たちはそれぞれに、こっそり亭主と賄賂の約束をしていて…。

遊行柳

 布教のため全国を旅する遊行上人の一行が、奥州・白河の関にやって来ました。そこに現れた老人は、先代の遊行上人が通ったという旧道を示し、そこに生えている苔むした柳の前へと導きます。この木こそ“朽木(くちき)の柳”として知られる銘木でした。老人は、西行法師がこの柳を歌に詠んだことを懐かしそうに語り、上人から念仏を授かると、柳の蔭に姿を消してしまいました。
 夜になり、念仏を唱える一行の前に老柳の精が現れ、上人の念仏に感謝します。昔日を懐かしみ、柳にまつわる古今東西の様々な故事を語った老柳の精は、草木の身ながら成仏ができたことを喜びます。そして、静かに舞を舞うと、夜明けとともに消えていくのでした。

苞山伏

 苞(食べ物を藁で包んだもの)を持って、薪を取りに山に入って来た山人は、早起きしたので眠くなり、途中の道端で寝てしまいました。そこに、長旅をしてきた山伏がやってきて、疲れたから休もうと、山人のそばで寝てしまいます。そこを通りかかった三人目の男、使いの者は、二人が寝込んでいるのをいいことに、山人の苞の中身を食べ、苞を山伏の枕元に置くと、二人のそばで寝たふりをします。やがて目を覚ました山人が、苞がないことに気がつくと…。

葛城

 修行のため葛城山を訪れた山伏の一行。大雪にみまわれて難渋しているところに、里の女が現れて宿を貸そうと申し出ます。案内された庵で暖をとり、夜の勤行をはじめようとする山伏たちに、女は、実は自分は葛城の神であることを明かします。いにしえ、山に岩橋をかけるよう役行者(えんのぎょうじゃ)に命じられたものの、自らの醜い容貌を恥じて夜にしか作業ができなかったため、岩橋は完成せず、役行者の怒りを蒙(こうむ)ったこと。そして今も呪縛されたまま苦しんでいることを語って、山伏に加持(かじ)を頼み、消えてしまいました。
 夜が更け、加持祈祷をする山伏の前に葛城の神が再び姿を現して、神代の時代に行われた天岩戸の前での舞を再現してみせます。そして、人に見られぬよう夜が明ける前に隠れようと言い、姿が見えなくなってしまいました。
 大和舞の小書により、雪深さを強調した演出となり、舞は通常の序ノ舞から神楽などに変わります。

  ※ 11月17日定例公演との演出の違いをお楽しみいただくため、12月15日定例公演は通常より一ヶ月早く発売しています。

◎演出の様々な形

 流儀や家の違い、小書(特殊演出)によって多種多様に変化する能狂言の演出。狂言と能を一番ずつ取り上げて、異なる形を11月、12月と、二ヶ月続けてご覧いただく企画です。

六地蔵

 田舎に暮らす男が、持仏堂を建立し、御堂に安置する六体の地蔵を求めに都にやってきました。男は、仏像をどこで注文をすればいいのかわからないので、「仏師、仏師!」と大声を出して探し始めます。
 すると、その姿を見たすっぱ(詐欺師)が男に近づき、自分こそ由緒正しい仏師だと名のります。そして、まんまと六地蔵の注文を取り付けて、明日の引き渡しを約束します。男と別れたすっぱは、仲間を呼び出して、自分たちが地蔵に化けて代金をせしめることにするのですが…。

七人猩々

 唐土(もろこし・中国)の揚子(ようす)の里に住む高風(こうふう)という孝行者は、夢のお告げに従って市で酒を売り富貴の身となります。市が立つたびに訪れる人のなかに、見た目は子供のようなのに、いくら飲んでも顔色ひとつ変わらない不思議な客がいました。ある日、高風が名をたずねると、男は、海中に棲む猩々(酒好きの妖精)だと明かします。猩々は、高風と酒を酌み交わし、酒の功を讃え、秋の夜の風趣をたのしみながら舞い戯れます。酩酊した高風がわれに返ると、そこに猩々の姿はなく、後には汲めども酒が尽きることのない酒壺が残されていました。
 通常の『猩々』の位を重くした演出のひとつに『乱』(11月上演)があります。宝生流にのみに伝わる『七人猩々』は、『乱』を基にして、七人の猩々が舞台に登場する華やかで豪華な演出です。

◎狂言の会

張蛸

 果報者が、正月の饗応の席で張蛸(広げて干した蛸)を引き出物にしようと思い、都で買ってくるよう太郎冠者に命じます。張蛸がどんなものなのか、どこで手に入るのか、わからないまま都にやってきた太郎冠者は、「張蛸、買います!」と大声で触れ歩きます。すると、その様子を見ていたすっぱ(詐欺師)が寄ってきて、「これが張蛸だ」と持ち出したのは、なんと古い太鼓で…。

米市

 暮らしが苦しく正月を迎える準備ができない男。毎年、年の瀬になると合力人(こうりょくにん・援助をしてくれる人)が合力米(生活支援の施米)を送ってくれるのですが、今年は大晦日だというのにまだ届きません。しかたなく合力人の家を訪ねてみると、うっかり送るのを忘れていたのだと言います。しかも、すでに蔵は閉められていて、米俵を出すことができないと言われ…。

金岡

 天下に名を知られた絵師の金岡は、家を出たまましばらく帰ってきません。心配した妻は、物狂いとなって洛外を彷徨っているという夫の噂を耳にして、探しに出かけます。運よく清水で行き会った夫に妻が訳を訊ねると、「絵を描きに行った御殿で、若く美しい上臈(じょうろう)と知り合い、天女のようなその面影を忘れることができない」と涙ながらに打ち明けます。一旦は腹を立てた妻ですが、思い直して、「女が美しいのは化粧のせい。ならば、絵の名人のあなたの手で私の顔を美しく彩ってごらんなさい」と勧めます。金岡は絵筆をとって妻の顔に彩色を施しますが…。
 『釣狐』や『花子』と同様に習物(ならいもの)とされる曲ですが、大納言の小書により、より位が高まる演出となります。替之型は、金岡の登場時に物狂いのさまを強調する演出です。

【以上、文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

 

12月23日(土)企画公演 午後1時開演

◎リクエスト能・狂言

 国立能楽堂開場40年のご愛顧に感謝の気持ちを込めて、お客様のリクエストで上演作品を決める初めての試みです。9月の開場40周年記念公演にご来場の皆様にご投票いただいた結果、狂言は「通円」、能は「屋島」に決定しました。公演冒頭には、特別に太鼓一調をお楽しみいただきます。

通円

 南都(奈良)へ向かう旅僧が宇治橋のたもとの茶屋へ立ち寄ると、所の者から宇治橋の供養で大勢の客に茶を点て過ぎて死んだ通円の話を聞きます。今日がその命日と教えられた僧が弔うと、通円の亡霊が現れ最期の有様を滔々と語り始めます。能「頼政」の詞章を巧みに狂言へと改編した舞狂言です。

屋島

 讃岐国(香川)・屋島の浦を訪れた旅僧は一夜の宿を求めます。塩を焼く粗末な小屋を宿に貸した漁翁は、かつて繰り広げられた屋島の合戦の有様を僧に語ると、自らの名を源義経とほのめかして姿を消します。その夜、僧の夢中に源義経の霊が色鮮やかな鎧姿で現れると、修羅道で続く戦いの様子を物語ります。

 命の危険を冒し海中から弓を拾い上げた「弓流」など、屋島の合戦での義経の雄姿や武将たちの活躍を描きます。奈須与市が扇を矢で射抜く逸話を間狂言で克明に語る「奈須与市語」は単独でも上演される狂言方の特別な曲です。

●12月主催公演発売日(12月15日定例公演を除く)
  • ・ 電話インターネット予約:11月10日(金)午前10時~
  • ・ 窓口販売:11月11日(土)午前10時~
  • 11月17日定例公演との演出の違いをお楽しみいただくため、12月15日定例公演は通常より一ヶ月早く発売しています。
  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/