
国立劇場9月文楽公演「吉田玉男一周忌追善」記者会見
去る5月28日、9月文楽公演「吉田玉男一周忌追善」の記者会見が国立劇場で行なわれました。
9月文楽公演は、第一部では『夏祭浪花鑑』、第二部では昨年9月に他界した吉田玉男の一周忌を追善して『菅原伝授手習鑑』を上演します。
吉田玉男(人間国宝・文化功労者)は、87年の生涯を人形遣いの道一筋に歩み、品格ある端正な芸で多くの観客を魅了してきました。
『菅原伝授手習鑑』の菅丞相は、数ある当たり役のなかでも代表的なものです。
会見に出席した竹本住大夫、鶴澤寛治、吉田簑助、吉田文雀、吉田玉女は、故人を偲びつつ9月公演に向けての思いを、それぞれ次のように述べました。

竹本住大夫(太夫・人間国宝)
早いもので玉男さんが亡くなられて、9月でもう1年。文楽で大正生まれは私だけになってしまい、寂しいです。『菅原』では「道明寺」で一度だけご一緒しましたが、ゆったり語らせてもらえて、語っていて安心でした。私事ですが、北海道に一緒に旅行したときはあの口数少ない人がよくしゃべり、話が大変面白く愉快でした。
9月公演では菅丞相を玉女君が遣いますが、浄瑠璃をよく読みハラに入れて遣ってもらいたい。師匠の玉男さんに近づくよう頑張ってほしいと思います。
鶴澤寛治(三味線・人間国宝)
おかげさまで5月公演『絵本太功記』は大入りの盛況、誠にありがとうございました。9月の玉男兄さん追善公演には、なお一層のご支援をよろしくお願いします。
吉田簑助(人形・人間国宝)
玉男兄さんの相手役として、恋人、夫婦、親子、主従、様々な役をつとめさせていただきました。心中物では、千回以上一緒に死んだでしょう。
玉男兄さんの人形には情がありました。『曽根崎心中』でお初の肩を抱く徳兵衛の右手は、微かにお初の背中を愛しげに撫でていました。また『国言詢音頭(くにことばくどきおんど)』の八柴初右衛門が、凄惨な五人斬りのあと雨の中を低吟して引っ込む、ぞっとするような色気。まさに百年に一人出るか出ないかという名人であったと思います。
吉田文雀(人形・人間国宝)
『菅原』では昭和54年道頓堀朝日座以来、私はずっと覚寿を勤め、玉男さんの菅丞相と9回ご一緒しました。今年の10回目が弟子の玉女君と一緒ということで、深い縁を感じます。玉男さんの菅丞相は、思い入れをするところがそのたびに少しずつ違うのですが、気持ちの上での”間合い”がうまくいくと、あとで満足そうにしておられました。また若い頃は、巡業の折にお茶目なところも見せた、いたずら好きな人でもありました。
吉田玉女(人形・吉田玉男門弟代表)
菅丞相といえば、師匠の名舞台のひとつ。師匠が60歳で初めて勤められた役で、まだ未熟な私がなかなか遣えるものではありませんが、師匠の足・左で注意を受けてきたことを思い返し、師匠の舞台を心に思い浮かべながら、命日となる千秋楽までしっかり勤めていきたいと思います。また門弟一同、師匠の芸と心を受け継いでいけるよう、各々の役を精一杯頑張りたいと思います。
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