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国立劇場

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【5月文楽】好評上演中、30日(火)まで!(舞台写真あり)

5月文楽公演が11日(木)に初日を迎えました。
第一部と第二部では、『菅原伝授手習鑑』の初段と二段目を上演し、文楽三大名作の一つに数えられる物語を発端からお届けいたします。8・9月公演で三段目~五段目を上演し、2公演にまたがった通し上演となります。上演が稀な場面も含めた51年ぶりの完全通し上演で、物語の全貌をご覧いただける貴重な機会です。
第三部では『夏祭浪花鑑』をお楽しみいただきます。大坂の盛夏を舞台に、侠客たちの生きざまが生き生きと描かれた人気作です。
舞台写真とともに、みどころをご紹介いたします。

【第一部】
『菅原伝授手習鑑』
(すがわらでんじゅてならいかがみ)初段
菅原道真(劇中では菅丞相)の悲劇と、丞相を慕って恩を報いようとする三つ子の兄弟の物語が絡み合う大作です。第一部は、配流のきっかけとなる事件や、題名につながる筆法伝授の場面が描かれる初段で、9月まで続く通し上演の幕開けを飾ります。

醍醐天皇の御代、病中の帝に代わり左大臣の藤原時平と右大臣の菅丞相が政治の中心を担っています。
書の道に優れた菅丞相は、帝から命令が下され、弟子の中から一人を選んで伝授することになります。
御簾の中で若手の太夫・三味線が入れ替わりながら演奏し、人形は黒衣で操る大序の形式で、左右大臣である時平と丞相の対照的な性根が描かれます。


『菅原伝授手習鑑』大内の段



菅丞相の領地・佐太村の百姓・四郎九郎には、梅王丸、松王丸、桜丸の三つ子の兄弟がおり、それぞれ丞相、藤原時平、皇弟の斎世親王に舎人として仕えています。桜丸が主人の斎世親王と丞相の養女・苅屋姫の逢引を取り持ちますが、時平の家来に見つかってしまい、二人は駆け落ちします。この事件が全編にわたる悲劇の元となります。


『菅原伝授手習鑑』加茂堤の段



勅諚によって筆法を伝授することになった菅丞相は、不義を理由に勘当された弟子の武部源蔵とその妻・戸浪を呼び出します。課題を仕上げて伝授を受けた源蔵が勘当の赦免を願いますが、丞相は聞き入れません。突然の参内の命を受けた丞相は、伝授の一巻を源蔵に託し、出立します。初段の山場、そして外題の由来となる重厚な場面です。




『菅原伝授手習鑑』筆法伝授の段



参内した丞相は、「斎世親王を苅屋姫の婿にして帝位に即けようとしている」という時平の讒言によって流罪を申し渡されます。梅王丸が丞相の若君・菅秀才を源蔵夫婦に託し、8・9月公演で上演する寺子屋の段への伏線となります。


『菅原伝授手習鑑』築地の段


◆◆◆



【第二部】
『菅原伝授手習鑑』
(すがわらでんじゅてならいかがみ)二段目
駆け落ちした斎世親王と苅屋姫、そして飴売りに扮してお供する桜丸は、苅屋姫の実家である土師(はじ)の里へ向かいますが、道行く人の噂で菅丞相の流罪を知り、船が待つ摂津安井へと進路を変えます。
この後の悲劇とは対照的に明るく朗らかな道行です。


『菅原伝授手習鑑』道行詞の甘替



菅丞相の一行は安井で船出の汐待をしています。斎世親王と苅屋姫、桜丸は丞相との対面を願いますが、判官代輝国に断られ、自分たちが流罪の原因だということを思い知ります。そこへ菅丞相の伯母(苅屋姫の実母)の覚寿の使いとして娘(苅屋姫の実姉)の立田前が現れ、丞相を土師の里に一泊させるよう頼みます。輝国はこれを許し、苅屋姫は立田とともに土師の里へ、親王と桜丸は都へと向かいます。
国立劇場では昭和47年(1972)年以来、51年ぶりの上演となる場面です。


『菅原伝授手習鑑』安井汐待の段



土師の里にある覚寿の屋敷でも、苅屋姫は菅丞相との対面を願います。覚寿は姫の気持ちを理解しながらも、丞相に対する義理からそれを許さず、杖で姫を折檻します。その時、丞相の声が聞こえ、驚いて襖を開けますが、丞相自らが伯母に宛てて彫った形見の木像があるだけです。これから続く奇跡の始まりが描かれます。


『菅原伝授手習鑑』杖折檻の段



立田前の夫・宿禰太郎とその父・土師兵衛は、時平の依頼で菅丞相を暗殺しようと企てます。それを立ち聞きした立田前が止めますが、殺されてしまいます。「東天紅」は東の空が紅に染まるという意味で、夜明けを告げる鶏の鳴き声を指し、太郎と兵衛は鶏を使った仕掛けで丞相を連れ出そうとします。


『菅原伝授手習鑑』東天紅の段



土師兵部の狙い通り、丞相は偽の迎えに連れ去られます。別れを惜しむ覚寿ですが、立田前が居ないことに気づきます。池の底から立田の死骸が引き上げられると、宿禰太郎が偽の下手人を仕立て上げますが、真の下手人に気づいた覚寿が自ら娘の敵を討ちます。


『菅原伝授手習鑑』宿禰太郎詮議の段



菅丞相を迎えに来た輝国が、丞相は偽の迎えに連れていかれたことに気が付きます。しかしそこへ連れ去られたはずの丞相が現れ、一同は混乱します。さらに偽の迎えが戻ってきて、木像ではなく本物の丞相を渡せと言い……。
通称“道明寺”と呼ばれる格調高い場面で、木像の奇跡とともに、丞相の出立、姫や覚寿との別れが描かれます。


『菅原伝授手習鑑』丞相名残の段


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【第三部】
『夏祭浪花鑑』
(なつまつりなにわかがみ)
三人の侠客の義侠心が生き生きと描かれ、活力にあふれた人気作です。
魚屋の団七九郎兵衛は、泉州浜田家の玉島磯之丞を助け、磯之丞の恋敵である大鳥佐賀右衛門の家来と喧嘩をしたために入牢していました。磯之丞の父のおかげで釈放された団七は、磯之丞を命に代えても守ると誓います。
釣船三婦、磯之丞、遊女琴浦、一寸徳兵衛と主要な人物が登場し、巡り合う場面です。


『夏祭浪花鑑』住吉鳥居前の段



磯之丞は団七が身元保証人となって、道具屋の手代となり、清七と名乗っています。主人の娘・お中に見初められますが、番頭の伝八はそのことを快く思っていません。伝八の策略で、清七が偽の香炉を買い付けてしまい、団七はその中に舅の義平次が加担していることに気づきます。その夜、清七は伝八への恨みを晴らすため店に忍び込み、お中と出くわします。暗闇で仲間と間違えた伝八から金を渡された清七は、お中とともに逃げて行きます。




『夏祭浪花鑑』内本町道具屋の段



釣船三婦は清七とお中と出会い、2人を追ってきた伝八を殺害すると、清七を家へ連れて帰ります。お中は家に帰されましたが、磯之丞の恋人・琴浦は、磯之丞の浮気を責めます。侠客たちは磯之丞を大坂から逃がそうと苦悩します。しかし義平次が琴浦を駕籠で迎えに来て連れ出し、それを聞いた団七は慌てて駕籠を追いかけます。
大坂の夏祭りの風情が沸き立ち、侠客たちやその女房の心意気が描かれます。歌舞伎にも踏襲されている団七縞、徳兵衛縞の衣裳にも注目です。


『夏祭浪花鑑』釣船三婦内の段



団七がようやく義平次に追いつくと、義平次は琴浦を売ろうとしています。琴浦を取り戻そうとする団七ですが、義平次は取り合わず、しまいには雪駄で団七の額を割ります。初めは舅は親と堪える団七ですが、たまりかねて脇差に手をかけ……。
団七と義平次のやり取りが掛け合いの演奏で繰り広げられ、物語のクライマックスとなる凄惨な舅殺しへと向かいます。


『夏祭浪花鑑』長町裏の段


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5月文楽公演は30日(火)まで!


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