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国立文楽劇場

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【10月舞踊公演】井上八千代、山村友五郎、吉村古ゆう、花柳基が抱負を語りました!

国立文楽劇場の秋を彩る「東西名流舞踊鑑賞会」。今年も10月14日(土)、第一線で活躍する東西の舞踊家達が顔を揃え、舞踊の魅力にせまります。
公演に先駆け、井上八千代、山村友五郎、吉村古ゆう、花柳基の四名が演目の魅力と抱負を語りました。


左から、花柳基・吉村古ゆう・井上八千代・山村友五郎

◆◆◆


井上八千代
(第1部 長唄『四季の山姥』)

『四季の山姥』は、昭和56年に祖母(四世井上八千代)が舞台上演のためにこしらえました。祖母から「こんな振りにするし、ちょっとやっとぉみぃ」と言われ、先輩方より早くその曲を知っておりました。そういうことはめったにないことでしたので、『四季の山姥』には特別の思いがありました。曲自体も三味線のおさらい会で弾いたことがあり、若気の至りで知ったような気になっておりました。
井上流で「山姥物」というと、身近な曲として地歌や常磐津、また義太夫の『しゃべり山姥』などがあります。対して、『四季の山姥』は長唄の演奏曲として作られた作品で、今の私にとっての山姥のイメージや京舞とは遠い印象があります。構成しなおして、できるだけ「京舞井上流」に近寄せたいと思っております。この会で長らくおつきあいくださっている杵屋東成さん、杵屋勝禄さん、そして藤舎呂浩さんに、お力をいただいて舞わせていただきたいです。
第2部の『こうの鳥』は私も映像でしか見たことがない伝説の曲です。以前吉村雄輝先生から直接お話を伺う機会があり、お話しぶりから一番の自信作であることが伝わってきました。今回、脂の乗り切った実力派で同い年のお三人で復活となることは得難い機会だと思います。ぜひお楽しみいただきたいです。



山村友五郎
(第2部 創作舞踊『こうの鳥』父鳥)

30年程前に『こうの鳥』の映像を見た時、囃子のみですべてを表現していて、とても衝撃を受けました。いつかはやりたいとずっと思っていた作品を、同い年の三人で奇しくも来年還暦を迎える節目の年にやらせていただけることになりました。作舞をされた吉村雄輝先生の二十七回忌の前に、こうして舞台に立たせていただく感謝も含めて舞わせていただきたいと思っています。
私がつとめます父鳥は、前半では夫婦の和やかであたたかな情愛の表現が重要となります。そして、最後は父鳥の動きで緞帳が下りるので、物語の結末をお客様に納得していただけるよう、しっかりと演じたいです。雄輝先生が能の鷺足(足を高く上げて、静かに歩く動き)を取り入れられていて、片足立ちが多いので体幹を鍛えています。


吉村古ゆう
(第2部 創作舞踊『こうの鳥』母鳥)

『こうの鳥』は、師匠の吉村雄輝が昭和34年に発表し、その年の文化庁芸術祭賞をいただいた作品です。後年、NHK衛星放送の番組内で以前に収録していた映像が再放送された際、隣で見ていた私に師匠が当時を懐かしみ、興奮して色々とお話くださいました。映像を見直していると、その時に伺ったことが蘇ってきます。師匠は誰でも分かる上方舞でありながら、舞踊をよくご覧になる方にも楽しんでいただける作品を目指していたと思います。
私がつとめます母鳥は、新婚の若妻、卵を温める母、そして卵を守って鷹と戦う強さという三つの面がありますので、その演じ分けをしっかりとお見せしたいです。師匠は特に母性の表現に厳しい方だったので、教えていただいたことを活かしたいと思います。


花柳基
(第2部 創作舞踊『こうの鳥』鷹)

『こうの鳥』の映像を拝見し、先人たちの舞台にかける情熱をものすごく感じました。当時、この作品に携わった方々が色々なことを話し合い、ぶつかりあいながら生まれた熱が伝わってきて、あらためて我々は過去に学び今があると思いました。この作品に我々同い年の三人で出させていただくということは、私にとって一つの財産です。雄輝先生は一般の方に、踊りや舞というカテゴリーを外して、分かりやすい作品を作ることを意図なさったと思います。
今回、こうの鳥の卵を狙う悪役の鷹をつとめますが、私なりに「粗にして野だが卑ではない」鷹にしたいと思っています。(囃子のみの演奏で)曲が演者とつきすぎても、離れすぎてもいけない作品ですので、演者と演奏のしのぎを削る緊迫感を生の舞台でお楽しみいただきたいと思います。

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『四季の山姥』
文久2年(1862) 3月、「新山姥」の曲名で、演奏曲として開曲。三世杵屋勘五郎作曲、作詞は盛岡藩藩主で隠居した南部利義(信侯)ほか諸説。
“山姥もの”で、近松門左衛門の「嫗山姥」(正徳2年[1712] 7月初演)の設定―山姥の前身は遊女八重桐で、坂田金時の母、を踏まえています。山姥がその昔廓勤めをしていた頃の思い出を、四季の移ろいに寄せて情趣たっぷりに描いたもので、最後に「山めぐり」で大力を少し見せ、心の旅路を終えた山姥が谷の庵を結ぶところまでを格調高く舞い納めます。
井上流では昭和56年、四世井上八千代振付。最初、山姥が糸車を回している振りで、過去の思い出を手繰り寄せてゆく雰囲気から始まります。

『こうの鳥』
昭和34年(1959)10月、第7回上方舞研究会(上野松坂ホール)において、吉村雄輝により発表された創作舞踊です。「地唄舞でなく踊りでなく、見てわかる新作を」(初演プログラムより)というねらいで、囃子のみの演奏にのせて、夫婦・親子の情愛が描かれます。吉村雄輝はこの作品で「清新にして卓越した振付、演出、演技を示した」として、同年度の第14回文化庁芸術祭賞(舞踊部門)を受賞しました。久しく上演がなかった本作を、このたび初演から64年ぶりに復活上演いたします。
【あらすじ】遠い山奥で仲むつまじく暮らすこうの鳥夫婦に卵が授かりました。父鳥は餌を探しに行き、母鳥はこれから始まる子育てを楽しみにしながら巣で卵をあたためています。その時、大きな鷹が巣を襲ってきて……。



『こうの鳥』初演 (左から)吉村雄輝夫・吉村雄輝



『こうの鳥』初演 (左から)吉村雄輝・藤間貴与志

東西名流舞踊鑑賞会
10月14日(土)
【第1部】 午後1時開演
【第2部】 午後4時開演

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