国立劇場

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【5月文楽】初日を迎えました

 5月12日(土)、5月文楽公演が初日を迎えました。吉田幸助改め五代目吉田玉助襲名披露の公演が東京でも始まりました。

 敷地内には五代目玉助の襲名披露を祝うのぼりが立ち、植栽の色鮮やかな緑と青空の下で映え、晴れやかな襲名の雰囲気を盛り上げています。

 満員のお客様が詰めかける中、第一部『本朝廿四孝』の幕が開きました。足利将軍の暗殺をめぐる武田、長尾(上杉)両家の確執を描いた時代物の大作から、今回は異形の軍師・山本勘助の誕生を描く三段目の上演です。

 幕開きの「桔梗原の段」の次は、吉田幸助改め五代目吉田玉助襲名披露の口上幕です。大きな拍手の中で緞帳が上がると、舞台には人形部座頭で重要無形文化財保持者(人間国宝)の吉田簑助を筆頭に、吉田和生、桐竹勘十郎、吉田玉男ほかの錚々たる顔ぶれが並びました。
 最後に「今後も五代目玉助と人形浄瑠璃文楽に一層のご声援をお願い申し上げます」と簑二郎が述べると、客席からは「五代目!」などの掛け声と共に万雷の拍手が送られました。

吉田幸助改め五代目吉田玉助襲名披露口上

 そして襲名披露狂言「勘助住家の段」。新・玉助の役は、かつて祖父・三代目玉助が襲名披露の際に遣い、父(吉田玉幸、この度四代目玉助を追贈されました)も遣った、横蔵後に山本勘助です。

勘助住家の段
 太夫と三味線が登場人物の心の動きと情景を鮮やかに描き出し、観客を物語に引き込みます。そして簑助ら人形遣いの役々が脇を固め、襲名の舞台に花を添えます。
 玉助が襲名会見でも語った「祖父(三代目玉助)のように、役を大きく遣える人形遣いになりたい」という言葉通り、ついに横蔵が自らの本性を顕して山本勘助を名乗るくだりでは、玉助の山本勘助が周囲を圧倒。舞台の盛り上がりは最高潮に達します。伝説の軍師の風格を見せ、客席は大いに沸きました。

勘助住家の段

勘助住家の段

 『義経千本桜』道行初音旅は、桜満開の吉野山を背景に、豊竹咲太夫と鶴澤燕三を始めとする総勢18人の太夫と三味線が舞台上に居並ぶ壮観な舞台です。圧巻の演奏の中、狐忠信と静御前の道行を美しく見せました。

道行初音旅

 第二部は女剣士による仇討の物語『彦山権現誓助剣』です。女剣士・お園と敵の京極内匠の互いの出生の秘密がからむ因縁と対決、そしてお園と許婚・毛谷村六助の出会いを描いた内容で、今回が18年ぶりの半通し上演の機会となりました。

 幕開きは、お園の妹・お菊が京極内匠に返り討ちに遭う「須磨浦の段」から始まります。
 続いて本公演の注目の一つ「瓢簞棚の段」。明智光秀が非業の最期を遂げた地である山城国(現在の京都府)小栗栖が舞台となり、内匠の亡父である光秀の亡魂の出現と、名剣の在りかを内匠に示すという怪奇、そしてお園と内匠がついに邂逅し、瓢箪棚の上で切り結ぶという意外性のある展開が続きます。

瓢簞棚の段

 段名の通り、高さ6尺(約1.8m)の瓢簞棚が舞台上に出現します。お園と内匠が瓢簞棚の上で見せる立廻りは迫力十分。内匠の持つ名剣の威徳によってお園は刀を折られますが、お園はなんと鎖鎌で対抗。また段切れの内匠の人形と人形遣いが飛び降りる場面では、そのスペクタクルな演出に客席から感嘆の声が上がりました。

瓢簞棚の段

 そして舞台は豊前国(現在の大分県)彦山の麓へと移り、いよいよ毛谷村六助が登場します。「杉坂墓所の段」では、六助が亡き母へ孝心厚くまた慈悲深い人柄、そして武道の達人としての力強さを見せます。

杉坂墓所の段

 文楽屈指の名場面「毛谷村六助住家の段」。仇討の旅で諸国を遍歴してきたお園。自らが刃を向けた男がなんと父の定めた許婚であったとわかった途端、態度を一変させて六助に見惚れ、甲斐甲斐しく尽くす様が微笑ましく描かれます。そして家族や郎党を次々に亡くした自らの境遇を六助に語るクドキが胸に迫ります。太夫、三味線、人形遣いがそれぞれ熱演し、ドラマのクライマックスを迎えます。
 六助がお園たちに助太刀を約束し出立する幕切れは、仇討の成就を予感させる晴れやかなものとなりました。

毛谷村六助住家の段

毛谷村六助住家の段

 初日は多くのお客様のご来場により、熱気ある舞台となりました。吉田幸助改め五代目吉田玉助襲名披露に、名作を上演中の5月文楽公演は28日(月)まで。皆様のご来場をお待ちしております。


 なお、第一部の襲名披露口上の映像を、第二部の休憩時間に劇場内ロビーにて放映しています。第二部にご来場の際はこちらにもぜひご注目ください。

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