理事長からのメッセージ
自らが芸術文化の振興の一翼を担い、社会に貢献する
日本芸術文化振興会の使命は、日本の伝統芸能の保存・振興に貢献するとともに、欧米諸国で生まれたオペラやバレエといった現代舞台芸術について、日本人が優れた芸術性や能力を有していることを証明することであります。加えて、当振興会は、文化庁から移管された文化芸術振興費補助金と芸術文化振興基金の運用益などにより、日本の芸術文化活動を広く助成する事業を行っています。
伝統芸能に関しましては、国立劇場や演芸場・能楽堂・文楽劇場・国立劇場おきなわ等の専用施設を活用して、歌舞伎、文楽、演芸、能楽、舞踊・邦楽、組踊等の定期公演を行っています。日本の伝統芸能は、数百年に及ぶ歴史があり、類ない価値を有しています。能楽、文楽、歌舞伎はユネスコの「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」を受け、平成20年11月に「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」へ記載されました。さらに、平成21年9月には、雅楽、アイヌ古式舞踊など、平成22年11月には組踊が同表に加えられています。
しかし、興行の世界は、歴史があるというだけで集客ができるほど甘いものではありません。時代が変化するとともに、人の心も日常使われる言語も変化しています。伝統芸能の形式を守りながら、お客様の共感を得るために創意工夫を取り入れることが必要です。昔ながらの形式の保存だけを考えれば「博物館の資料」になってしまいます。満席のお客様を前にして舞台で熱演が続いて、初めて真の意味で「振興」と言えるのです。
古い言葉で語られる台詞や詩歌を現代の人々に理解し易くするために、各劇場で字幕やイヤホンガイドを用意しております。能楽を鑑賞する外国からのお客様が多いことを考慮し、国立能楽堂には、日本語と英語を選択できるパーソナル・タイプの字幕表示装置を設置いたしました。歌舞伎や文楽でも国際化に備えて設置したいのですが、莫大な経費を要しますので、今しばらくお待ち願います。
伝統芸能の継承者を育成するのも重要な責務です。当振興会では、発足以来、継承者の養成事業を続けており、文楽の技芸員の約5割、歌舞伎俳優でも約3割が私どもの研修修了生です。このように、当振興会の養成研修事業なしでは伝統芸能の保存・振興はあり得ない状況になっています。
私は、当振興会の役職員が伝統芸能や現代舞台芸術に対し、情熱と使命感を持っていることを心強く感じております。「自らが芸術文化の振興の一翼を担うことで、社会に貢献しているのだ」という気概は仕事の遣り甲斐につながり、ひいては生き甲斐にもなります。若い皆さんがこのような使命に賛同して、一生の仕事にしたいとチャレンジされることを待っています。
独立行政法人日本芸術文化振興会
理事長 茂木 賢三郎