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1月民俗芸能公演詳報(1)
舞い、踊る獅子たちⅢ-中国・四国・九州編-

23年1月29日(土)に開催いたします民俗芸能公演は1時開演、4時開演の2回公演で、開演時間によってテーマの異なる公演を行います。
この公演詳報でそれぞれの公演内容を詳しくご紹介していきたいと思います。第1回目は1時開演の「舞い、踊る獅子たち -中国・四国・九州編-」です。

午後1時開演:「舞い、踊る獅子たち -中国・四国・九州編-」ちらし

日本全国に伝わる獅子の芸能を特集する公演の3回目となります。これまで「東北・関東編」(H21.3)、「中部・近畿編」(H22.1)と地域を分けてご紹介してきましたが、今回は「中国・四国・九州編」を上演し、この「舞い、踊る獅子たち」シリーズの完結となります。
 伎楽が大陸より伝わっておよそ千四百年。その伎楽と共に日本に伝わった獅子は、日本古来の芸能と結び付き、多彩な芸態で現在まで受け継がれています。
 今回焦点を当てる「中国・四国・九州」地域には、獅子を日本に伝えた大陸に近いせいか、異国風な獅子が数多く伝わっています。

隠岐国分寺蓮華会舞(おきこくぶんじれんげえまい) 出演=隠岐国分寺蓮華会舞保存会(島根県隠岐の島町) 眠り佛之舞 獅子之舞

渡来当時の面影を残す獅子

 公演の最初に登場するのは、島根県沖の日本海に浮かぶ隠岐の島に伝わる隠岐国分寺蓮華会舞の獅子です。この蓮華会舞は、平安時代の古代舞楽の流れを受け継ぐと言われる芸能で、舞楽系の獅子としては、大阪四天王寺舞楽とこの蓮華会舞が知られています。
 もともと神事として行われていた獅子舞は、時を経て神事から離れ、悪魔祓いや清めの門付け芸になるなど、各地の民俗芸能と融合して受け継がれる中、蓮華会舞の獅子には古い渡来芸能である伎楽の名残を留めていると言われています。
 今回は現在伝わる蓮華会舞の7つの舞より、2つの舞をご覧いただきます。

眠り佛之舞

眠り佛之舞

舞場に上がった二人の佛(童子)が居眠りを始めます。舞場の周りを回っている獅子が佛の持つサンダワラに咬みつくと、驚いた佛は起き、もう一方の佛もその物音で飛び上がって驚きます。目を覚ました二人の佛が舞場中央で相撲を取り、また居眠りを始めるというものです。舞、というよりは滑稽さを醸し出す無言劇と言った方がよいでしょうか。

獅子之舞

獅子之舞

演奏に合わせて、舞場の四隅に立てられた「国家安康」「家内安全」「天下泰平」「五穀豊穣」と書かれた幟を噛んだり、荒々しく舞う一方で、寝そべって毛づくろいをして寝入ってしまうなど、見所の多い獅子舞です。

二條の獅子舞 出演=二條獅子連(香川県三木町)

獅子処に伝わる牡丹に戯れる色鮮やかな獅子

 香川県は県内におよそ1100もの獅子舞が伝わる日本有数の獅子処として知られます。特に二條の獅子舞が伝わる三木町では毎年秋に「獅子舞フェスタ」を開催するなど獅子舞の盛んな地域です。香川の獅子の特徴は、張り子の獅子頭、跳ね上がる耳、武者絵など多彩な柄で獅子を華やかにする油単(ユタン)(獅子の胴に用いる幕)、そして大鉦を用いたお囃子です。

二條の獅子舞

今回上演する二條の獅子舞は、2頭の獅子と子獅子が牡丹の花に戯れる姿を勇壮な舞で表します。舞の中ほどの、獅子が酒を飲む場面は、獅子の動きが特に華やかに見える最大の見せ場となっています。また天狗面を付けたキョウクチが、寝ている獅子を起こしたり、柄杓で獅子に酒を飲ませたりする際の滑稽な動きにもご注目下さい。また今回の為に新調した色鮮やかな油単もお見逃しなく。

琴路(きんろ)  出演=南川獅子舞保存会(佐賀県鹿島市)

韓国の獅子を思わせる有明の獅子

韓国の獅子を思わせる有明の獅子

佐賀県鹿島市には、韓国仮面劇の獅子で見るような、丸く平らな獅子面が特徴的な獅子舞が伝わっています。この獅子頭(獅子面)は、竹や紙などを素材にした張り子で作られています。この作り方にも韓国の獅子との共通点が多く、まさに有明海を介した大陸との文化交流の賜物といえるのではなでしょうか。
そしてもう一つ特徴的なのが、お囃子がないことです。獅子がうなるように「アーバババ」「ワーワー」などと声を出して演じます。

御幣をもって獅子を先導する獅子釣りが、赤獅子、青獅子を引きつれて舞場に入ります。獅子舞は赤獅子(雄)がうなり声をあげながら、青獅子(雌)を追いかける形で演じられます。獅子面を高く、時に低くかざしながら乱舞する勇壮なものです。
今回は、琴路神社の祭礼で獅子舞の後に必ず奉納される剣舞も併せて上演します。

公演の後半は、シリーズの締めくくりとして地域を離れ、現代に舞い、踊る伝統的な獅子たちの姿をご覧いただきます。

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バリ島のバロンダンス  出演=深川バロン倶楽部

異国に根付くバリの獅子

バリ島の三大舞踊の一つに数えられるバロンダンス。善の象徴である聖獣バロンと悪の象徴である魔女ランダの終わりなき戦いを描いています。バロンとランダの戦いは、バリヒンズー教のもつ生と死、善と悪などの相対する概念を表しています。
また、たとえ倒されても復活しランダと戦い続けるとされるバロンは、あらゆる災厄を防ぐ力をもつと信じられています。

バロンダンス

このバロンダンスをバリ島で習得したのが今回出演の深川バロン倶楽部です。
 バロンダンスに魅せられて演じており、彼らの地元である東京・富岡八幡宮例大祭でおよそ20年もの間、ガムラン演奏とバリ舞踊とともにバロンダンスを奉納しています。今では町の夏の風物詩となり、幼い頃から八幡さんで見ていたバロンダンスに大人になって関わるようになった人もいるなど、しっかりと地元に根付いている異国の獅子をお楽しみ下さい。

上演演目
「パリス・グデ」 バリスは「戦士」、グデは「大きい」という意。バリの儀礼的な舞踊のひとつで、バリの寺院祭の儀礼にかかせない舞です。数人から数十人の男性によって踊られます。
「パニャンブラマ」 「歓迎」という意。花を盛りつけた供物を手に、華やかに舞う女性の舞最後に花をまいて祭りの場を清めます。
「バロンダンス」 善の象徴である聖獣バロンと悪の象徴であるランダの戦いを描くバリ舞踊の代表的な舞です。

琉球の大獅子  出演=琉球國祭り太鼓

琉球の伝統と現代を見せる獅子

バロンダンス

三線(さんしん)や太鼓の演奏に合わせて舞う琉球の獅子舞は、悪霊を祓い、弥勒世(ミルクユー)を招き、五穀豊穣・子孫繁栄や地域の繁栄をもたらすといわれ、沖縄県内各地に約180もの獅子が多種多様に受け継がれています。
 その特徴は胴体が幕ではなく、胴も足も芭蕉などの繊維で作られた着ぐるみ風の装い、そして獅子頭は梯梧(でいご)などの材質の軽い木で作られているところです。

上演演目
蓬莱(ほうらい)エイサー口説(くどち) エイサーと獅子舞による邪気払いです。
(とぅい)()(めー) >明治期に首里の寒水川芝居で上演された舞をアレンジし、
民俗楽器の三板(さんば)と手獅子を使って斬新に舞います。
「年中口説」 沖縄の年中行事を歌ったリズミカルな曲に合わせて勇壮に舞います。
「ミルクムナリ」 琉球國祭り太鼓を代表する演舞曲です。
「天の舞 琉球大獅子」 沖縄の平和を象徴する伝統の獅子を勇壮に舞います。

 以上の5つの獅子舞をご覧いただき、それぞれが持つ歴史や文化、そしてその結びつきを感じながら、脈々と受け継がれ、また生み出されていく芸能の持つ奥深さを感じて頂ければ幸いです。

 前回の公演で好評をいただいた、獅子博物館 館長の高橋裕一さんによる獅子舞のお話もありますので、こちらもどうぞお楽しみ下さい。

公演情報詳細