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文楽版「テンペスト」 『天変斯止嵐后晴』特別連載
Vol.5 「出演者のことば 桐竹勘十郎さん」

桐竹勘十郎さん

春太郎との恋物語-阿蘇左衛門の娘・美登里-

『天変斯止嵐后晴』で、阿蘇左衛門の娘・美登里の役を遣う人形遣い・桐竹勘十郎さんにお話を聞きました。

 美登里はこのお芝居に登場する唯一の女性です。美登里は十二年前に父親・阿蘇左衛門とともに島に流れ着いて、そこで育ち、父親以外の人に会ったことがないという純真無垢な女性です。

 春太郎との婚礼からはチラシなどでご覧いただいているようなお姫様の衣裳に改めますが、それまでは「俊寛」の千鳥のように、人形の足を吊り、裾絡げ(衣裳の裾をたくし上げて帯にはさみ込んだ)した姿で登場します。

 物語の中で、美登里は春太郎と出逢い、恋をします。この美登里の恋物語の場面は、クドキ(苦しい胸の内を恋人に打ち明ける場面)にあたります。ここは清治さんの作曲も古典に近い曲調になっていますし、こちらも古典のクドキをもとにしながら遣い、無垢な十代のかわいらしい女性を表現したいと思います。

 テンポが良く、最後までどんどんお芝居が展開していきますので、これを機会に文楽を見たことがない若い方にもぜひ見ていただきたいですね。

お芝居がはじまって…… (7月24日大阪にて)

実際に舞台で美登里を遣ってみて思ったのは、やはり、春太郎との出逢いの場面で見初める時の気持ちをどう出すかが、難しい所でした。この場は父の方術ではなく、二人の真実の心が出る所ですので、特に気を付けて遣っております。

VOL.6は8月7日ごろの更新の予定です。