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奈良 西大寺の声明 -光明真言土砂加持大法会-

現地レポート

2010年、遷都1300年に沸いた古都・奈良。6月11日(土)の声明公演では、まだ熱気が冷めぬ奈良より西大寺の声明をご紹介します。
南都七大寺のひとつに数えられる西大寺は、東の大寺に対する西の大寺として、天平宝字8年(764)に創建された古刹で、真言律宗の総本山となっています。

西大寺と聞いて「大茶盛式(おおちゃもりしき)」を思い出す方も多いのではないでしょうか。大きな茶碗を抱えて抹茶をみなで回し飲む姿は、ニュースや新聞などでよく取り上げられています。
しかしこの西大寺の最大の行事は、何といっても毎年10月に行われる光明真言土砂加持大法会です。

光明真言土砂加持大法会は、文永元年(1264)に興正菩薩叡尊(こうしょうぼさつえいそん)が始めた西大寺で連綿と続く伝統の法会で、およそ750年もの間、執り行われています。

現在では10月3日から5日までの3日間行われるこの法会は、休むことなくオン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウンという23の文字で構成される光明真言を唱え、本尊前に置かれた土砂を加持(光明真言の力を加えて清める)していきます。この法会の時は本堂も五色の幕に覆われ、内陣の床には畳が敷きつめられるなど、特別な荘厳がなされます。

光明真言は、古来真言宗でもっとも重要視されてきた真言(仏の真実の言葉)です。これを唱えれば一切の罪障が消滅し、またこの真言を唱えて加持した土砂を墓所に撒けば亡者はたちまち極楽往生を遂げるといわれる、大きな力を持った言葉なのです。
それでは早速、昨年10月に行われた大法会の様子をお伝えします。

「ドーン ドーン ドーン」
地を震わすような太鼓の音が響く中、僧侶が入堂し、いよいよ法会の始まりです。

法会は堂内が僧侶たちの声で満たされる中、全体的にゆっくりと進んでいきます。様々な式次第が行われる中で、特に印象的なのが「綱維問訊(こういもんじん)」と「光明真言行道(ぎょうどう)」です


綱維問訊

「綱維問訊」では、鼠色の衣を着けた僧侶(綱維)が登場し、一﨟(最長老の僧)の前で五体投地を始めます。その動きはまさにスーパースローモーション!上体は直立したままじわじわと足を折り、膝をつき、腰を曲げ、伏せるまでの動作を7~8分かけて、ゆっくりゆっくりと行っていきます。そしてまた同じ時間かけて元の姿勢に戻っていくのです。その姿がまるで提灯を折りたたむようであることから、俗に「提灯たたみ」ともよばれています。


光明真言行道

これが終われば、光明真言を唱えながら堂内を回る「光明真言行道」となります。一音唱えるごとに畳一畳分を進んでは止まり、止まっては進みながら、ゆっくりと回っていきます。柿色の僧衣を着た僧侶はいつしか内陣をぐるりと囲む燈籠の明かりと一体となって、音の輪、光の輪をつくっていき、堂内は不思議な祈りの雰囲気に満たされます。

今回の公演ではこの3日間不断に行われる法会を2回の公演に凝縮して上演します。
祈りの世界が再現される舞台にどうぞご期待下さい。