歌舞伎公演ニュース

2017年12月22日

くろごちゃんと行く!
初春歌舞伎公演『世界花小栗判官』ゆかりの
遊行寺と江の島(神奈川県藤沢市)

 中世以降語り継がれてきた「小栗判官」伝説。語り物の源流と言われる芸能「説経節」に取り込まれ、すれ違いを繰り返しながら艱難辛苦を乗り越える小栗判官と恋人の照手姫の物語が、各地の寺社の縁起や霊験譚を絡めて描かれました。
 平成30年の幕開けを飾る初春歌舞伎公演『世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん)』は、「小栗判官」伝説を題材とした歌舞伎作品の決定版と言われている『姫競双葉絵草紙』を新たに補綴して上演します。今回、くろごちゃんは小栗判官と照手姫にゆかりの深い遊行寺(神奈川県藤沢市)を訪れました。

▼遊行寺の惣門にて


付き人:くろごちゃん、黒くて大きな門があるよ、立派だねえ!

(⌒v⌒):おお~、遊行寺(ゆぎょうじ)の惣門に着いたね。というわけで、みんなこんにちは! くろごちゃんだよ! 今日は神奈川県藤沢市にある清浄光寺(しょうじょうこうじ)に来ているよ。ここは「小栗判官」伝説に、とってもゆかりの深いお寺なんだ。

付き人:んん、ちょっと待って。遊行寺と清浄光寺? お寺は一つなのに名前が二つ……!?

(⌒v⌒):正式名称が「藤澤山 無量光院 清浄光寺」で、通称「遊行寺」だよ。江戸時代から、たくさんの人で賑わう名所だったんだ。ほら、この浮世絵を見て! 右上に「東海道名所之内 ふちさ八 遊行寺」って書いてあるでしょ~。通称「行列東海道」と呼ばれるシリーズもので、幕末の徳川家茂の上洛を、頼朝上洛に仮託した作品なんだ。長い行列が横切っているね~!


歌川貞秀「東海道名所之内 ふちさ八 遊行寺」
提供:藤沢市藤澤浮世絵館(外部サイトにリンクしています)

付き人:うわぁ、この門からお寺まで長い坂道が続いてる! お寺の大きさが伝わってくるね。

(⌒v⌒):この道は「いろは坂」と言ってね……(楽しそうに説明を始めるくろごちゃん)……

付き人:……ちょっと待って! ということは、もしかして! これからこの長い坂を登るの……(◎△◎;)

(⌒v⌒)/:じゃあ、さっそく行ってみよう=З=З

付き人:あっ、待って~、くろごちゃ~ん(´△`;)

付き人:ひい、ふう……

(⌒v⌒;):(付き人さんたら、大丈夫かなぁ……)あっ、付き人さん、こっちに一遍上人像があるよ。


遊行寺(清浄光寺)
 いろは坂を登り切って山門跡に立つと、遊行寺(清浄光寺)の広々とした境内が見渡せます。正中二年(1325)遊行四代呑海上人が、実兄である地頭俣野五郎景平の援助によって、極楽寺という廃寺を再興して、遊行引退後の住まいとしました。これが藤沢山清浄光院(のちに清浄光寺)となった時宗の総本山です。宗祖・一遍上人は念仏を勧める賦算(「南無阿弥陀仏、決定往生六十万人」と記したお礼を配ること)と信仰の喜びを踊りであらわす踊り念仏で、みなことごとく往生安楽の境地へ至ることができると説いて諸国を遍歴しました。それにならって歴代の上人も遊行を続けたので遊行上人と呼ばれ、当寺も遊行寺の名で通るようになりました。
藤沢市ふじさわ宿交流館ホームページより(外部サイトにリンクしています)



▼いよいよ小栗判官のお墓へ

(⌒v⌒):本堂脇の細い道を進むと、小栗判官と照手姫のお墓がある小栗堂(長生院)に行けるよ。通称「車坂」!

付き人:坂ということは……もしかして、また登るの……!?

(⌒v⌒)/:それじゃあ、張り切って行ってみよう!

付き人:くっ、くろごちゃ~ん……(´△`;)

付き人:…………………

(⌒v⌒;):(付き人さんたら、息を切らしてる……)小栗判官と家臣のお墓の前に着いたよ。隣に照手姫のお墓もあるね。小栗判官が乗りこなした名馬・鬼鹿毛(おにかげ)のお墓もここにあるんだ~。

付き人:物語にゆかりのある人々のお墓が、こうして今も大切に守り継がれているんだねぇ……。今度のお芝居では、そんな伝説のヒーローたちが活躍するのかぁ~。なんだか、一気に親近感が湧いてきたよ!

(⌒v⌒):(あっ、付き人さんがちょっと元気になった!)うん、そうだね。付き人さん、一緒にお参りしていこうよ。


小栗堂(長生院)
 室町時代の応永29年(1422)、常陸小栗の城主・判官満重が、足利持氏に攻められて落城、その子・判官助重が、家臣と三河に逃げのびる途中、この藤沢で横山太郎に毒殺されかけたことがあります。このとき妓女・照手が助重らを逃がし、一行は遊行上人に助けられました。その後、助重は家名を再興し、照手を妻に迎えました。助重の死後、照手は髪を落とし長生尼と名のり、助重と家臣の墓を守り、余生を長生院で過ごしたとされています。
遊行寺ホームページより(外部サイトにリンクしています)



▼再び門前へ

付き人:お寺の門前まで戻ってきたね。ねえ、くろごちゃん! もっと小栗判官・照手姫ゆかりの地を歩いてみたいなあ。

(⌒v⌒):付き人さん、珍しくやる気だね! 病を得た小栗判官は熊野(和歌山県・三重県)まで詣でたって話だよ。

付き人:(珍しくやる気って!)……でも熊野までは、いくらなんでも遠すぎだよ~!

(⌒v⌒):その長い長~い道のりを、小栗判官は人々に助けられて、ついに熊野権現まで詣でることができたんだからすごいよね。ぼくたちはそういうわけにも行かないから……もうちょっとこの辺りを歩いてみよっか。お山から下りてきてすぐの川に架かるのが、ここ遊行寺橋だよ。

付き人:橋の近くに石碑があるけど、これはなに?

(⌒v⌒):昔、この遊行寺橋の辺りには鳥居があったんだ。ほら、この浮世絵にも遊行寺と遊行寺橋が描かれているよ!


歌川広重「東海道五拾三次之内 藤沢 遊行寺」(左)と、
歌川国貞(三代豊国)「東海道五十三次之内 藤沢 小栗判官」(右)
提供:藤沢市藤澤浮世絵館(外部サイトにリンクしています)

付き人:ええと、と言うことは右奥の山にあるのがさっきまでいた遊行寺で、左手前の橋が遊行寺橋だね。でも、お寺の前なのになんで橋のたもとに鳥居が立っているのかな?

(⌒v⌒):これは江の島(江の島弁財天)へと向かう一ノ鳥居。この絵には描かれていないけど、画面手前が江の島へ続いているんだよ。この絵は遊行寺橋のあたりが、大山詣や江の島詣の参詣者で賑わっていた様子を描いているんだよ。今度のお芝居でも、江の島沖が登場するんだ!

付き人:なるほど~。くろごちゃん、この浮世絵のように江の島まで足を延ばしてみよっか! きっと夕日がきれいだよ。


藤沢宿
 東海道の宿場町として発展した藤沢は、時宗総本山遊行寺の立地する場所であり、また信仰・行楽の地「江の島」や「大山」への入口ともなる街として、江戸から訪れる人々を魅了する観光地でもありました。江戸後期には、当時の旅行ブームを背景に、各宿場の名所・旧跡を描いた東海道五十三次シリーズが版行され、藤沢宿も多種多様に描かれています。
藤沢市藤澤浮世絵館ホームページより(外部サイトにリンクしています)



▼そして江の島へ

(⌒v⌒)付き人:おぉ~~~……!!

付き人:なんとも神々しい夕日だねぇ……。風も気持ちいいし、疲れが吹っ飛んじゃった!


江の島
 江の島は、湘南海岸に浮かぶ陸繋島(りくけいとう、陸地と繋がった島)で、波に削られてできた洞窟「岩屋」の存在は、古来、宗教的な修行の場として多くの著名な修行者の来訪を伝えています。鎌倉時代に将軍・源頼朝の祈願により文覚上人(もんがくしょうにん)が弁財天を勧請したという由来から、弁財天の島として信仰を集め、また風光明媚な行楽の地としても人気を集めるようになりました。
藤沢市藤澤浮世絵館ホームページより(外部サイトにリンクしています)



(⌒v⌒):江の島沖はお芝居にも登場して摩訶不思議な現象が起きるんだ。そこへ神出鬼没の盗賊・風間八郎が現れて……。続きは劇場で! みんなも観劇の前後にゆかりの地を訪れて、悠久の歴史ロマンに想いを馳せてみてね~。

付き人:うん。実際に歩いた土地がお芝居に登場すると、感慨もひとしおだね。初春公演がとっても楽しみ!

~ふたりは江の島沖に沈む夕日を眺めながら、初芝居に胸を高鳴らせるのでした~