50周年記念公演ニュース

2016年10月04日

【10月歌舞伎公演】『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』【第一部】
初日を迎えました!

 10月3日(月)、国立劇場開場50周年記念『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』【第一部】の幕が開きました。上演可能な場面を全て網羅してお送りする三ヶ月連続完全通し上演がいよいよ始まりました!

 『仮名手本忠臣蔵』は、『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』とともに義太夫狂言の三大名作に数えられる人気演目で、「赤穂事件」を題材にとったものです。
 元禄14年(1701)、赤穂藩主の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が、高家旗本の吉良上野介(きらこうずけのすけ)に江戸城中で刃傷に及び、即日切腹、領地没収を言い渡されました。浪人となった赤穂藩の家臣四十七士は、翌年の元禄15年、主君の無念を晴らすため、吉良上野介の屋敷に討ち入りました。この「赤穂事件」は、「赤穂浪士の討入り」や「忠臣蔵」として数々の芸能や書籍等で親しまれてきました。『仮名手本忠臣蔵』は、この事件を題材にとったいわゆる「忠臣蔵もの」の金字塔と呼べる作品です。刃傷事件から「四十七」年後の寛延元年(1748)、人形浄瑠璃で初演されました。当時の幕府をはばかり、作品の舞台や人物名などを『太平記』(南北朝時代の争乱を描いた軍記物語)の世界に移して描かれています。
 
 10月の【第一部】では、大序から四段目までを上演します。
 大序では、開演に先だって口上人形が舞台上に登場します。
 口上人形が「エヘン、エヘン」と言いながら、【第一部】の役人替名(やくにんかえな:配役)を告げます。これは、『仮名手本忠臣蔵』を大序から上演する時にだけ行う演出です。抑揚をつけながら、時にコミカルなしぐさを交え、出演俳優とその役名を告げます。大星由良之助を勤める松本幸四郎、塩冶判官を勤める中村梅玉の名前が読み上げられると、一層盛大な拍手が湧き起こりました。これから上演される舞台への期待がふくらみます。



口上人形

 口上人形の登場は午前10時50分頃です。こちらも、どうぞお見逃しなく!
 そして、「天王立下り羽(てんのうだちさがりは)」という荘重な音楽と、「四十七」回打たれる柝の音とともに、大序の幕が開きます。



大序「鶴ヶ岡社頭兜改め」の幕開き

 幕が開いても、登場人物は俯いたまま動きません。竹本の語る浄瑠璃で名前を呼ばれた順に、登場人物が目を開け、息を吹き込まれたように動き出します。これは、原作の人形浄瑠璃に敬意を払った演出です。儀式的な幕開きにより、次第に作品の世界に引き込まれます。
 大序では、第一部の展開で重要となる高師直(市川左團次)・桃井若狭之助(中村錦之助)・塩冶判官(中村梅玉)の関係が描かれます。また、師直は判官の妻・顔世(片岡秀太郎)に恋文を渡しますが、このことが後に起きる事件の発端となります。

 二段目では、若狭之助の真面目で一本気な様子と、主君とお家を案じる家臣・加古川本蔵(市川團蔵)の苦心が描かれます。また、加古川本蔵の娘・小浪(中村米吉)と、塩冶家の国家老・大星由良之助の倅・力弥(中村隼人)の初々しい恋模様は、12月の【第三部】で上演される八段目・九段目の序章となります。



二段目「力弥使者」
<左より>大星力弥(中村隼人)、小浪(中村米吉)


二段目「松切り」
<左より>加古川本蔵(市川團蔵)、桃井若狭之助(中村錦之助)

 昭和63年(1988)1月大阪中座以来28年ぶりに全編を上演する三段目。判官による師直への刃傷事件を軸に、今後の展開に重要な人物たちの行動が描かれます。
 苦心の上に本蔵が師直に賄賂を贈る「足利館門前」の前半(通称“進物”)は、師直の家来・鷺坂伴内(市村橘太郎)と中間(ちゅうげん)とのやり取りに、客席からも笑いが起こるユーモラスな場面です。



三段目「足利館門前」
〈左より〉加古川本蔵(市川團蔵)、鷺坂伴内(市村橘太郎)

 「松の間刃傷」は、歌舞伎では通称“喧嘩場”とも呼ばれています。師直は、顔世に恋慕の想いを拒絶され、その憤りを判官に向けます。判官は、始めは受け流していましたが、次第に堪え切れなくなります。執拗に侮辱する師直と次第に気色ばんでいく判官。両者の演技にご注目ください。



三段目「松の間刃傷」
〈左より〉塩冶判官(中村梅玉)、高師直(市川左團次)

 また、「足利館門前」の後半(通称“文使い”)と「裏門」では、判官の家臣である早野勘平(中村扇雀)と恋人のおかる(市川高麗蔵)の恋模様と、11月の【第二部】につながる二人の悲劇の始まりも描かれます。



三段目「裏門」
(左より)腰元おかる(市川高麗蔵)、早野勘平(中村扇雀)

 そして、【第一部】の最大の山場を迎える四段目。
 東京では昭和50年12月当劇場以来41年ぶりの上演となる「花献上」。判官の妻・顔世が、処分を待つ判官を慰めるため、腰元たちに鎌倉山の桜を活けさせます。短い場面ですが、刃傷事件の大きな原因は自分にあると憂う顔世の悲しみが描かれます。


四段目「花献上」
〈中央〉顔世御前(片岡秀太郎)、〈右〉大星力弥(中村隼人)ほか

 そして「判官切腹」。判官が切腹に臨み、由良之助(松本幸四郎)の到着を待ちますが、時間の猶予はありません。ついに刀を腹に突き立てたところへ、由良之助が駆け付け、判官と対面します。由良之助が花道を駆けて登場するシーンには、緊張感が漲ります。判官が由良之助に無念の想いを伝える場面は、胸に迫ります。また、国家老としての貫録と複雑な想いを肚芸で表現する由良之助の演技もみどころです。さらに、主君の無念を晴らす決意を胸に秘めた由良之助の「城明渡し」の引込みまで目が離せません。
 なお、「判官切腹」は古くから「通さん場(とおさんば)」と呼ばれ、舞台の厳粛な雰囲気を保つ演出のため、上演中の客席への出入りが止められてきました。今回もこれに倣い、「判官切腹」が始まってから約50分間、客席への出入りを制限させていただきます。ご協力をお願い申し上げます。



四段目「判官切腹」
(左より)大星由良之助(松本幸四郎)、塩冶判官(中村梅玉)


四段目「城明渡し」
大星由良之助(松本幸四郎)

 【第一部】では、刃傷事件を軸に、登場人物それぞれの人生が交錯していきます。この後の展開の伏線も描かれており、10月の【第一部】をご覧いただくと、11月の【第二部】や12月の【第三部】の内容がわかりやすくなります。
 三ヶ月にわたる『仮名手本忠臣蔵』完全通し上演。物語の全容を観ることができるので、『忠臣蔵』を初めてご覧になる方にも、『忠臣蔵』が大好きな方にも、おすすめの公演です。適役揃いによる俳優の迫真の演技が、名作の魅力を一層引き立てます!
 お馴染みの名場面あり、上演の稀な場面ありと、話題の多い10月の【第一部】を、ぜひ、劇場でご覧ください!


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演目解説『仮名手本忠臣蔵』
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